Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:その他

(S466)

胎児治療における強力集束超音波の安全性の検討

Evaluation of safety of High-intensity focused ultrasound in fetal therapy

市塚 清健1, 長谷川 潤一1, 松岡 隆1, 石川 哲也1, 市原 三義1, 大槻 克文1, 岡井 崇1, 梅村 晋一郎2

Kiyotake ICHIZUKA1, Junichi HASEGAWA1, Ryu MATSUOKA1, Tetsuya ISHIKAWA1, Mitsuyoshi ICHIHARA1, Katsufumi OTSUKI1, Takashi OKAI1, Shin-ichirou UMEMURA2

1昭和大学産婦人科, 2東北大学大学院医工学研究科

1Obstetrics and Gynecology, Showa University, 2Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
我々は,強力集束超音波(High-intensity focused ultrasound: HIFU)を用いた胎児治療の応用に向けて種々な基礎的実験を行って来ており,その知見をもとに実際にclinical trialも行った.一方,超音波治療についての安全性や合併症という観点からの報告は未だ少なく,この分野の研究の促進が望まれる.そこで,今回は基礎的検討および臨床症例でのHIFU照射における有害事象と安全対策について検討した.動物実験は本学動物実験委員会の承認のもと,ヒトに関しては倫理委員会の承認のもと患者から書面による同意を得て行われた.
【方法】
1)動物実験;照射対象はラビット胎仔臍動脈.母獣腹壁を十分剃毛した後,超音波ゼリーをカップリング剤として脱気水槽を母獣腹壁に静置し,水槽内から超音波ガイド下でHIFU照射を行った.HIFUトランスデューサーの焦点距離は7cm,周波数2.2MHz,強度5500 W/cm2,5秒間照射を1クールとし,血流途絶に至る迄複数回照射を行った.HIFU照射中は母獣および非照射胎仔の心拍数を超音波で計測した.HIFU照射終了後に母獣を開腹,腹腔内の観察を行うとともに胎仔を摘出して胎仔表面および内部を検査し,照射血管周囲組織をHE染色で病理学的に検討した.2)clinical trial;照射対象は妊娠26週のTRAPsequence症例である.HIFUトランスデューサーを脱気水の入ったバッグに入れ,イメージング超音波ガイド下でHIFU照射を行った.母体腹壁とバッグのカップリング剤としてはオリーブオイルを用いた.照射目標は異常胎児の臍帯動脈における逆行性血流が体内に流入した部位とした.使用したHIFUトランスデューサーは焦点距離7cm,周波数2.0MHz,HIFU強度2300W/cm2,照射時間は1クール10秒間で,血流遮断を目標に数クール照射した.HIFU照射前後にNSTを行い,健常児の心拍数モニタリングおよび子宮収縮の有無の確認を行った.
【結果および対策】
1)対象血管周囲約6mmに凝固壊死像が認められたが,超音波透過経路には組織学的変化は認められなかった.腹腔内にもHIFU照射の影響と思われる変化は認められなかった.5500 W/cm2の強度で母獣腹壁に水泡形成を伴う中等度熱傷が認められたが,照射中またその後,胎児および母獣に心拍数の変化など身体的影響は認められなかった.2)複数回の照射を行い超音波カラードプラで血流の減弱が確認されたが,結果的に血流遮断には至らなかった.照射血管周囲に高輝度領域が確認され変性が考えられた.健常児に心拍数変化などの副障害はみられなかった.母体においても子宮収縮などの副障害は認められなかったが,照射直後に腹壁に軽度の発赤が一時的に認められた.水袋で冷却し熱傷の合併はなかった.
【結論】
超音波透過経路に組織障害が認められないことが確認された.HIFU照射目標から6mm程度の範囲で組織学的に変性壊死が認められたが,その範囲を超えての影響は認められなかった.動物実験およびclinical trialともに母体皮膚に熱作用が表れ,特に動物実験でその作用が強く出ていた事は,皮膚と水バッグとの境界におけるカップリングの重要性を示唆するものと思われた.