Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管3

(S456)

大腸憩室炎の超音波診断に関する検討-日本大腸憩室疾患研究会の検討-

Diagnostic ability of transabdominal ultrasonography for colonic diverticulitis

眞部 紀明1, 春間 賢2, 畠 二郎1, 筒井 英明2, 河合 良介1, 今村 祐志1, 山下 直人3, 楠 裕明3

Noriaki MANABE1, Ken HARUMA2, Jiro HATA1, Hideaki TSUTSUI2, Ryosuke KAWAI1, Hiroshi IMAMURA1, Naohito YAMASHITA3, Hiroaki KUSUNOKI3

1川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 2川崎医科大学消化管内科学, 3川崎医科大学総合臨床医学

1Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 2Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School, 3Department of Health Care Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景】
食生活の欧米化等に伴い,近年本邦で大腸憩室が増加してきている.大腸憩室の合併症として最も頻度の高い疾患は大腸憩室炎であるが,大腸憩室患者の10〜30%に認められ,重症例では膿瘍や瘻孔を形成し,穿孔性腹膜炎や大腸狭窄あるいは閉塞を惹起し,外科手術を要する事があるため,早期診断が重要である.一般に大腸憩室炎を採血結果あるいは理学所見のみで診断する事は難しく,画像検査が必要になる事が多い.これまでComputed tomography (CT)が大腸憩室炎診断におけるゴールドスタンダードとされてきたが,近年の超音波機器の性能の向上から体外式腹部超音波検査(US)が大腸憩室炎の診断や治療効果判定に有用とする報告も認められる.しかしながら,これまで大腸憩室炎のUS診断に関する本邦での多施設による多数例での検討はない.
【目的】
本邦の大腸憩室炎のUS診断の現状と問題点について検討する.
【対象および方法】
平成18年1月より平成23年5 月の期間に,本邦における日本大腸憩室疾患研究会に所属する21施設においてCTあるいはUSにて大腸憩室炎と診断した1,157例(男性674例,女性483例,平均年齢52.0才)を対象とした.まず,確定診断に用いたmodalityについて検討し,USのみで確定診断している施設の割合を検討した.次に,確定診断方法別に患者背景,大腸憩室炎の罹患部位,重症度,発症から確定診断までの期間について検討した.最後に,USとCTの両方を確定診断に用いた症例に対し,各画像所見の比較を行なった.
【結果】
対象患者の大腸憩室炎の罹患部位の内訳は右側大腸が784例(67.8%),左側大腸が340例(29.4%),両側が33例(2.9%)であった.また,膿瘍形成,穿孔等の大腸憩室炎に関連した合併症を170例(14.7%)に認めた.確定診断のためのmodalityとしては,CTのみが746例(64.5%),USのみが174例(15.0%),USおよびCTによる症例が237例(20.5%)と,圧倒的に確定診断にCTを用いた症例が多かった.更に,確定診断方法は施設ごとに異なっており,USのみで大腸憩室炎を診断した事のある施設は全体で9施設(42.9%)に過ぎなかった.次に,各確定診断方法別に患者背景(自覚症状,body mass index),憩室炎の部位,重症度,確定診断までの期間,その後の入院日数の違いを検討したところ,確定診断方法別には有意差を認めず,USにより,これまでゴールドスタンダードとされてきたCTと同様な背景を有する患者に大腸憩室炎との確定診断ができていた.最後に,USとCTの両者を確定診断に用いた237例(男性135例,女性102例,平均年齢50.8才,BMI 22.9kg/m2)について,それぞれの画像所見を比較した.なお,237例の大腸憩室炎の罹患部位は右側が73.0%,左側が24.5%,両側が2.5%であった.CT所見で大腸壁から突出するガス像と周囲脂肪織の肥厚所見が同時に観察された症例は237例中163例(68.5%)であり,残りの74例(31.5%)は大腸周囲の脂肪織の肥厚のみが観察されていた.一方,US所見を解析すると,237例中200例(84.3%)で,大腸壁から突出する憩室エコーと周囲の脂肪織の肥厚の両者が描出されており,USにてより詳細な観察が可能であった.また,CTにて大腸周囲の脂肪織の肥厚のみが観察された48例は,USにて大腸壁から突出する憩室エコーを全例で確認していた.
【結語】
USによる大腸憩室炎の診断能には,大きな施設間格差が認められ,現状ではCTのみで診断する施設が半数以上に見られた.高分解能かつリアルタイムに評価できるUSの特性を考慮すると,USを大腸憩室炎に対する first lineの検査法とすることで,今後より効率的な診療戦略の決定に役立つことが推察された.