Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝癌・治療

(S447)

肝生検・ラジオ波焼灼療法後の腹腔内出血に対するエタノール注入超音波ガイド下止血術

Ultrasound-guided hemostasis using percutaneous ethanol injection for hemoperitoneum after percutaneous liver biopsy or radiofrequency ablation

森 良幸, 玉井 秀幸, 新垣 直樹, 森畠 康策, 上田 和樹, 前北 隆雄, 井口 幹崇, 一瀬 雅夫

Yoshiyuki MORI, Hideyuki TAMAI, Naoki SHINGAKI, Kousaku MORIBATA, Kazuki UEDA, Takao MAEKITA, Mikitaka IGUCHI, Masao ICHINOSE

和歌山県立医科大学第二内科

the Second department of Internal Medicine, Wakayama Medical University

キーワード :

【目的】
腹腔内出血は経皮的肝生検や経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)など経皮経肝的穿刺手技の重篤な合併症の1つであるが,確実な止血術は未だ確立されていない.我々は肝生検・RFA後の腹腔内出血に対してエタノール注入による止血術を行い,その効果と安全性について検討した.
【対象と方法】
2001年4月より2011年11月の間に,肝生検およびRFAを施行したのべ2722例(肝生検820例,RFA 1902例)を対象とした.肝生検針は18Gまたは16G 径を使用し,RFAはCooltip針(17G)を使用した.生検あるいはRFA直後に穿刺経路をカラードプラ法にて観察.穿刺経路に一致して,肝表にまで線状の出血シグナルが検出された場合,出血シグナルが自然に消失するかどうかしばらく(約10分程度)観察し,自然消失すれば手技を終了とした.これに対し自然に出血シグナルが消失せず,経時的に腹腔内出血量が増加し,大量出血が予想される場合には,エタノール注入による止血術を行った.止血術は,カラードプラガイドあるいはソナゾイド造影ガイド下に行った.エタノール注入量は1回0.2mlずつとし,注入点は出血点の1cm程度深部とした.出血シグナルの消失またはソナゾイド造影エコーで造影剤の肝外漏出の消失と,腹腔内出血の経時的増加がみられないことを確認した上で手技を終了した.術後の安静は非止血術例,止血術例とも3時間とした.
【結果】
穿刺術直後に出血シグナルがみられなかった症例では腹腔内出血はなかった.術後の腹腔内出血は70例(2.6%)で認められた.そのうち56例は出血シグナルが自然に消失し,腹腔内出血は僅かであった.しかし残りの14例(0.5%)は,出血シグナルは自然に消失せず,経時的に腹腔内出血量が増加し,大量出血が予想されたため,エタノール注入による止血術を行った.止血に必要としたエタノール量は平均1.0ml(0.4-2.2ml)であり,全例が止血に成功した.止血術に伴う合併症は認められなかった.また止血術後のバイタルサインの変動は認められず,輸血を必要とした症例はなかった.また止血術後の再出血も認められなかった.
【結論】
経皮的肝穿刺術後の腹腔内出血に対するエタノール注入による超音波ガイド下止血術の安全性は高く,止血効果は極めて高かった.術直後のカラードプラによる穿刺経路の観察は,腹腔内出血を予知でき,止血術を行うことにより輸血を必要とする大量出血を阻止できると考えられた.