長沼 裕子¹, 石田 秀明², 古川 佳代子², 渡部 多佳子², 大山 葉子³, 伊藤 恵子⁴, 長井 裕⁵, 矢野 雅彦⁶, 花岡 明彦⁷, 上田 若奈⁷

Hiroko NAGANUMA¹, Hideaki ISHIDA², Kayoko FURUKAWA², Takako WATANABE², Yoko OHYAMA³, Keiko ITOU⁴, Hiroshi NAGAI⁵, Masahiko YANO⁶, Akihiko HANAOKA⁷, Wakana UEDA⁷

¹市立横手病院消化器科, ²秋田赤十字病院超音波センター, ³秋田組合総合病院臨床検査科, ⁴仙北組合総合病院臨床検査科, ⁵N.G.I.研究所, ⁶東芝メディカルシステムズ超音波担当, ⁷日立メディコ超音波担当

¹Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, ²Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ³Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, ⁴Department of Medical Laboratory, Senboku Kumiai General Hospital, ⁵New Generation Imaging Laboratory, ⁶Ultrasound System Group, Toshiba Medical Systems, ⁷Ultrasound System Group, Hitachi Medical Systems

キーワード :

【はじめに】
我々は肝嚢胞内や腸管内などにときおり観察される小さなキラキラと点状または粒状にみえる高エコー信号に気づき,今回petit echoと仮称し,この現象について検討し若干の知見を得たので報告する．
【対象と方法】
2010年4月〜2011年10月の腹部超音波検査で,キラキラと点状〜粒状の高エコー,petit echoが観察された肝嚢胞内液5例,腸管内容物2例,腹水1例の計8例において,B-mode,M-modeでその信号の出現位置や特徴を観察し,また,ティッシュハーモニック画像（以下THI）から基本波画像にしたときに変化するかどうか検討した．使用装置：日立社製Preirus,東芝社製Aplio XG,Xario XG．コンベックスプローブ,中心周波数3-4MHz．
【結果】
肝嚢胞5例の大きさは4-15cm,平均11cm,全例に嚢胞内をただよう点状エコーの集合体である内部エコーを認めた．腸管内容物では,2例とも腸管の拡張があり,内容物が腸液と混在し,腸管内部を移動している様子を認めた．腹水例は,腹膜炎症例で腹水中に細胞成分や炎症によると考えられる内部エコーを認めた．8例に,キラキラと輝いてみえては消える点状〜粒状の高エコーシグナルを認め,それは深さ4-6cmの範囲で主に観察された（図）．また,観察中にTHIから基本波画像にすると,そのシグナルは消失した．
【まとめ】
今回我々が検討したpetit echoは,肝嚢胞,腸管内,腹水内において,微小な内部エコーが存在するときに観察された．このアーチファクトは,いままでB-mode上,肝嚢胞内などに認められるアーチファクトとして認識されていた,①サイドローブ,②多重反射,③くも状エコーなどとは,全く異なるものと思われる．その理由としては,超音波ビームの向きを変えたり視野深度を変えても消失せず,また,キラキラと輝いたり消えたりを繰り返し,さらにTHIを基本波画像にすると消失することなどがあげられる．Petit echoは4-6cmの深さで,ハーモニック信号がもっとも発生しやすい深さで観察されることや,基本波画像にすると消失することから,THIに伴うアーチファクトと考えられるが,それ以外の要因もある可能性があり,詳細に関しては,今後,基礎的実験で解決されることと思われる．