Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:その他3

(S443)

Ring-down artifactとcomet-tail artifactに関する検討

The difference in B-mode and M-mode signal between ring-down artifact and comet-tail artifact

長沼 裕子1, 石田 秀明2, 長井 裕3, 大山 葉子4, 小川 眞広5, 伊藤 恵子6, 須田 亜衣子6, 花岡 明彦7, 上田 若奈7, 矢野 雅彦8

Hiroko NAGANUMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroshi NAGAI3, Yoko OHYAMA4, Masahiro OGAWA5, Keiko ITOU6, Aiko SUDA6, Akihiko HANAOKA7, Wakana UEDA7, Masahiko YANO8

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3N.G.I.研究所, 4秋田組合総合病院臨床検査科, 5駿河台日本大学病院消化器肝臓内科, 6仙北組合総合病院臨床検査科, 7日立メディカルシステムス超音波担当, 8東芝メディカルシステムズ超音波担当

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3New Generation Imaging Laboratory, 4Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 5Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Surugadai Hospital, 6Department of Medical Laboratory, Senboku Kumiai General Hospital, 7Ultrasound System Group, Hitachi Medical Systems, 8Ultrasound System Group, Toshiba Medical Systems

キーワード :

【はじめに】
Ring-down artifact(以下ring-down)は消化管,胆道気腫などの空気を反射源として発せられる平行な帯状シグナルが繰り返されるもので,日常的に遭遇するアーチファクトである1).一方,comet-tail artifact(以下comet)は強いエコーの後方に彗星のように尾をひくアーチファクトでこれもよく遭遇するものである.両者は見かけ上,似ているために混同されることがあるが,それぞれ機序の異なる,別のアーチファクトである.今回我々は,ring-downとcometの理解のためにB-modeとM-modeという多面的な検討が有用と考え,ring-downの典型例とcometの典型例についてB-mode上の特徴を検討しなおし,さらにM-mode所見を新たに検討したので報告する.
【対象と方法】
消化管の観察中にみられたring-down20例,胆嚢壁に観察されたcomet 20例について,B-modeとM-modeの両方で観察し,そのシグナルの違いについて検討した.使用装置は日立Preirus,EUB8500,東芝Aplio XG,XV,Xario XG,GE-Healthcare LOGIQE9.
【結果】
①B-mode:Ring-downの20例全例で,反射体である空気の後方に,ある幅をもった帯状の周期性のあるシグナルが観察され,それは深部に行くにつれて,減衰することなくむしろ放射状にやや広がって認められた.Cometの20例全例で,反射体である壁内結石またはRokitansky-Ashoff sinusの後方に,次第に減衰する高エコーを認めた.②M-mode:Ring-downの20例全例で,M-modeでは深部まで減衰しない,ある幅をもった高エコーと無エコーが周期性をもって繰り返される力強いシグナルを認めた.Cometの20例全例で,深部にいくにつれて減衰する線状のエコーを認めた.
【まとめ】
Rign-downは,超音波が空気に達した際に,空気の層の内部に閉じ込められたラッパ状の形状を呈しながら存在する液体を振動させ,そこから発せられる信号であるとされている1).そのため,ring-downの信号は,深部においても全く減衰のない,周期性をもったシグナルとして観察され,B-modeでは深部にいくにつれてむしろ放射状にやや広がる信号が,M-modeでは深部で減衰しない周期性のあるシグナルが特徴的に明瞭に示される.Cometは多重反射であるため,B-modeおよびM-modeで深部にいくにつれ先細りの信号となり,減衰する.M-modeは時間軸に対する病変部の変化を理解するために,主に心エコーで用いられる手法であるが,この手法を用いることにより,時間軸での表示が可能になり,シグナルの特徴が理解しやすくなることがある.本検討でも,M-modeでシグナルの違いがより明瞭に理解できた.Ring-downとcometは混同されやすいが,機序が異なる別のアーチファクトであるという認識が必要で,B-modeでも両者の違いは比較的明瞭であるが,M-modeでの観察を加えることで,その鑑別はより容易になる.
【文献】
1)Avruch L, Cooperberg PL. The ring-down artifact. J Ultrasound Med 4: 21-28, 1985.