Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:その他2

(S441)

体循環が腹部血流量に及ぼす影響についての検討

Relationship of systemic circulation to splanchnic arterial volume

阪上 順一1, 十亀 義生1, 保田 宏明1, 泰井 敦子1, 内藤 裕二1, 片岡 慶正2

Junichi SAKAGAMI1, Yoshio SOGAME1, Hiroaki YASUDA1, Astuko TAII1, Yuji NAITO1, Keisho KATAOKA2

1京都府立医科大学消化器内科, 2大津市民病院消化器内科

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Kyoto Prefectural University of Medicine, 2Department of Gastroenterology and Hepatology, Otsu Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
体循環が不全状態になれば腹部血行動態に影響することが知られている(Berk, et al. 1976; Bruch, et al. 1985; Trompeter, et al. 2002, etc).しかし,体循環と腹部血流量に対する腹部超音波検査の血流測定を用いた系統だった報告は僅少である.今回われわれは,腹部超音波検査血流測定を連続的に実施した症例から,体循環が腹部血流に与える影響を検討することを目的とした.
【対象と方法】
消化器系受療者で腹部超音波検査における血流測定を実施した連続4,545例を母集団とする解析を行った.そのうち,腹腔動脈CeA,上腸間膜動脈SMA,下腸間膜動脈IMAの血流計測がなされていた症例は361例存在し,その中で各々の動脈の血流方向と入射ビームとの角度が60度未満で正確に測定されていると判定した246例(M:F=95:151,Age=62.5±16.9(M±SD))を対象とした.測定時の収縮期血圧SBP,拡張期血圧DBP,心拍数HRを計測し,CeA, SMA, IMAの血流量を既報に基づいて計算した.CeA, SMA, IMA 血流量のそれぞれの関係を検討し,SBP,DBP,HRと各血流量との関係を解析した.加えて,SIRS診断基準や潰瘍性大腸炎で用いられる心拍数≧90/分をカットオフした解析を行った.
【成績】
SMA血流量はCeA血流量とIMA血流量と有意な相関関係が得られた(各P=0.0024,P=0.018)が,CeA血流量とIMA血流量との間には有意な一次相関はみられなかった(P=0.50).CeA血流量はSBP,DBP,HRと有意相関はみられなかった(各P=0.53,P=0.92,P=0.41)が,SMA血流量はDBPとHRに有意な負の相関関係がみられた(各P=0.023,P=0.0054).また,IMA血流量はHRに有意な負の相関関係がみられた(P=0.038).心拍数≧90/分ではCeA血流量は変動がみられなかった(P=0.50)が,SMA,IMA 血流量に有意な低下が示された(各P=0.018,P=0.0024).
【結論】
腹腔動脈血流量と下腸間膜動脈血流量は上腸間膜動脈血流量と正の関係がある.腹腔動脈血流量は体血圧や心拍数の影響を受けにくいが,上腸間膜動脈血流量は拡張期血圧増加と心拍数増加で減少し,下腸間膜動脈は心拍数増加で減少する可能性が示唆された.