竹島 賢治¹, 乙部 克彦¹, 高橋 健一¹, 今吉 由美¹, 川島 望¹, 杉田 文芳¹, 熊田 卓², 豊田 秀徳², 多田 俊史², 金森 明²

Kenji TAKESHIMA¹, Katuhiko OTOBE¹, Kenichi TAKAHASHI¹, Yumi IMAYOSHI¹, Nozomi KAWASHIMA¹, Fumiyoshi SUGITA¹, Takashi KUMADA², Hidenori TOYODA², Toshifumi TADA², Akira KANAMORI²

¹大垣市民病院医療技術部診療検査科形態診断室, ²大垣市民病院消化器内科

¹Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital, ²Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
悪性腫瘍の治療法の選択には,肝転移の有無が重要なポイントとなる．今回我々は肝転移の検索を目的に,Sonazoidを用いた造影超音波（以下CEUS）にて後血管相（Kupffer相）による評価を行い,造影CT（以下CECT）と比較し検討を行ったので報告する．
【対象】
対象は,2007年4月から2011年9月の間に肝以外の悪性腫瘍と診断され,連続してCEUSの後血管相を撮像された828例中,同時期にCECTを施行し,両者の画像の比較が可能であった675症例である．診断の確定は各種画像診断および経過観察にて行った．また,個数や大きさの検討には,肝転移と確定診断され,5個以下の結節を有す57症例を対象とした．男女比は446：229,原発病巣は大腸癌：307症例,胃癌：263症例,膵臓癌：44症例,食道癌：14症例,胆管癌：10症例,乳頭部癌：5症例,胆嚢癌：4例,その他10例,不明例18症例であった．
【検討項目】
肝転移の描出能比較,検出個数の比較,検出腫瘍径の比較を行った．
【方法および使用機器】
使用した超音波機器は東芝社製AplioXGである．Sonazoidの投与量は0.015ml/Kgで,投与終了後30分以降（2時間まで）に後血管相（Kupffer相）を撮像した．CTは東芝社製Aquilion16もしくはXvision Realを用いた．CEUSの評価基準は後血管相にて周囲肝に比し明らかに低エコー（造影剤の取り込み低下もしくは欠損）を呈するものとした．一方,CECTは動脈相にてring enhancement sign,平衡相にてwashoutsなど,肝転移を疑う画像所見を有するものを総合的に判断した．また,肝転移の個数は,手術所見や経過観察による各種画像の最終的な個数とした．
【結果】
675症例を対象としたCEUS後血管相の検出能は,感度86.3％,特異度97.3％,陽性的中率82.6％,陰性的中率97.9％であった．また,CECTの感度は93.2％,特異度97.4％,陽性的中率84.5％,陰性的中率99.0％であり,両群間で差は認めなかった．個数を確定した57症例の検討では肝転移と最終診断された個数108個に対し,CEUS後血管相では83個が描出され,CECTでは91個が描出された．一方,肝転移と最終診断された個数を基準に両画像で描出能を比較すると,CEUS後血管相とCECTの検出個数が合致したものは30症例,CEUS後血管相の個数が最終診断に診断された個数に近かったものが12症例．CECTのほうが近かったものが13症例であった．また,いずれの検査でも検出できなかったものが2症例認められた．検出された腫瘍径の比較では,CEUS後血管相では平均19.1mm,中央値15.0mmで最小が2mm,最大が106mmであり,CECTでは平均20.0mm,中央値16.5mm,最小が6mm,最大が115mmであった．
【考察】
CEUS後血管相の肝転移の検出能はCECTに比して差は認めず,ほぼ同等と考えられた．一方検出腫瘍径は高周波プローブが活用できるCEUS後血管相での小結節の描出が認められた．被爆が少なく,大掛かりな装置を必要としないCEUS後血管相は簡便であり転移性肝癌のスクリーニングに有用であると考えられた．