Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝嚢胞・肝転移

(S428)

当院の腹部超音波検査における転移性肝腫瘍の検出率について

Detection rate of the metastatic liver tumor using ultrasonography

乙部 克彦1, 竹島 賢治1, 高橋 健一1, 川島 望1, 今吉 由美1, 後藤 孝司1, 杉田 文芳1, 熊田 卓2, 豊田 秀徳2, 多田 俊史2

Katsuhiko OTOBE1, Kenji TAKESHIMA1, Kenichi TAKAHASHI1, Nozomi KAWASHIMA1, Yumi IMAYOSHI1, Takashi GOTOU1, Fumiyoshi SUGITA1, Takashi KUMADA2, Hidenori TOYODA2, Toshifumi TADA2

1大垣市民病院診療検査科, 2大垣市民病院消化器内科

1Department of Clinical Reserch, Ogaki Municipal Hospital, 2Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
転移性肝腫瘍は肝の悪性腫瘍の中で最も発生頻度が高く,肝転移の有無が予後や治療方針に大きく関与するため腹部超音波検査(以下US)による肝腫瘍の検出は大きな役割の一つである.USはその簡便さから転移性肝腫瘍のスクリーニング検査の第一選択にされることが多いが,肺や消化管のガスによる死角や腹腔内脂肪などによる減衰,そして超音波装置や術者の技量によりその検出が大きく左右される.今回はCT検査をgold standardとして比較検討したので報告する.
【対象】
2008年4月から2011年3月までの間に,腹部腫瘍の有無および腫瘍術後の転移検索の目的で腹部CT検査が施行され,肝に転移性腫瘍が存在した1957例中,CT検査より前2週間以内にUSが施行された141例である.男性86名,女性55名,平均年齢は67歳,腫瘍原発巣は大腸58例,胃32例,膵17例,肺10例,乳腺5例,卵巣3例,その他13例である.141例中CT検査による検出結節数が4個以上の多発群が79例,3個以下群が62例,90結節であった.多発群の最大腫瘍径の中央値は36mm(9~145mm),3個以下群は20.5mm(5~68mm)であった.結節数3個以下群の90結節の存在区域はS1, 3結節,S2, 5結節,S3, 10結節,S4, 13結節,S5, 9結節,S6, 17結節,S7, 13結節,S8, 20結節であった.
【方法】
使用超音波装置はToshiba Aplio XG,XV,ALOKA SSD5500,SSD4000,α10,α7を用いた.CT装置はTOSHIBA Aquilion16もしくはSIEMENS SOMATOM Sefinition AS+を用いた.撮像時相は,単純と平衡相(造影は600mgI/kg,1.0mL/sec,delay timeは150sec)の二時相で評価し,単純で境界不明瞭な低吸収,平衡相で辺縁部がリングエンハンスされたものを転移性肝腫瘍とした.USは肝内をスクリーニング走査し,肝腫瘤の超音波診断基準に準じて確診,疑診,判定保留を有所見とした.腫瘍が4個以上(以下多発群)は最大の腫瘍径のみを計測し,3個以下(以下3個以下群)は存在する腫瘍の個数と腫瘍径を測定し,存在区域を同定した.検討方法は,141例を対象としたUSの有所見率(肝に1個以上の腫瘍の存在を指摘できた場合を有所見とした),次に個数の比較が可能であった62例を対象に以下の検討を行った.USの検出率(CT検査とUSの検出個数の一致率),検出率と腫瘍径の関係,検出率と存在区域別の関係,検者間の検出率について検討した.
【結果】
1.USの有所見率は141例中,115例で81.6%であった.多発群は93.7%(74/79例),3個以下群は66.1%(41/62例)であった.2.USの検出率は60%(54/90結節)であった.3.USにて検出された腫瘍径の中央値は22mm(9~65mm)で,未検出は17.5mm(5~34mm)であった.4.存在区域による検出率は,S1, 100%(3/3結節),S2, 80%(4/5結節),S3, 80%(8/10結節),S4, 76.9%(10/13結節),S5, 55.6%(5/9結節),S6, 52.6%(9/17結節),S7, 46.1%(6/13結節),S8,4 5%(9/20結節)と右葉にて低かった.5.検者間の検出率は20~87.5%であった.
【考察】
当院のUSによる転移性肝腫瘍の有所見率は81.6%であり,多発群を除くと66.1%と非常に低い結果であった.また検出率も60%と低く満足できるものではなかった.USで未検出であった腫瘍径は比較的小さなものであったが,多発群で最大腫瘍径が50mmと大きなものが見落とされていた症例も存在した.存在区域による検出率は右葉で低かったが,右葉は左葉と比べ観察領域が大きく観察不十分になりやすく,また肋間走査では肝表面や肋骨の背側などの描出不良域の影響があると考えられる.検者間の検出率のばらつきも大きく,走査手技や方法を再確認し個々の検出率を向上させる必要があると思われた.