Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管1

(S421)

造影超音波が有用と思われた大腸癌の1例

A Case of Colonic Carcinoma in which Ehnanced Ultrasonography is useful.

若杉 聡1, 2, 秋葉 恵美子2, 渡邉 康代2, 佐藤 由美子2, 鈴木 基郎2, 水谷 正彦3, 石田 秀明4

Satoshi WAKASUGI1, 2, Emiko AKIBA2, Yasuyo WATANABE2, Yumiko SATOU2, Motoo SUZUKI2, Masahiko MIZUTANI3, Hideaki ISHIDA4

1亀田総合病院消化器診断科, 2安房地域医療センター臨床検査室, 3安房地域医療センター外科, 4秋田赤十字病院超音波センター

1Division of Digestive Diagnosis Department of Internal Medicine, Kameda Medical Center Hospital, 2Division of Clinical Laboratory, Awa Regional Medical Center, 3Division of Surgery, Awa Regional Medical Center, 4Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査はCT,MRIより空間分解能が良好な点が長所である.しかも進行大腸癌においては,大腸壁の層構造の読影から,肉眼形態の診断や深達度診断も可能である.一方,多重反射などのアーチファクトで,ときに病変の観察に難渋する点が短所である.今回,我々はB mode所見と造影超音波所見から,肉眼形態と深達度診断が可能になった大腸癌の1例を経験したので,報告する.
【症例】
74歳,女性.主訴は,貧血精査である.既往歴として,高血圧,下肢静脈瘤,高γグロブリン血症がある.家族歴に特記すべきことはない.1年前に他院で便潜血陽性を指摘され,当院で上部消化管内視鏡検査を予約したが,本人の都合によりキャンセルとなった.その後,検査を受けていなかったが,近医での血液検査で貧血を認めたため,安房地域医療センターに2011年10月に紹介受診となった.下部消化管内視鏡検査を行ったところ,盲腸に2型の進行癌を認めた.
【腹部CT検査所見】
盲腸から上行結腸にかけて腫瘤の存在が疑われた.その他,肝に小類円形造影不良域を認め,嚢胞を疑われたが,転移との鑑別が問題になった.
【腹部超音波検査】
肝に後方エコー増強を伴う小類円形低〜無エコー性病変を数個散在して認め,嚢胞を疑った.盲腸から上行結腸にかけて腫瘤像を認めた.正常の壁から観察すると,腫瘤のほぼ全周を正常壁が取り囲むように存在した.壁と腫瘤の間には所々にガス像を認めた.腫瘤を取り囲む壁の大部分に肥厚像を認めず,腫瘤の大部分は壁と接しているだけの状態と考えた.腫瘤の背外側で大腸壁の第4層(固有筋層)が腫瘤内に引き込まれる像を認め,腫瘤の壁付着部と思われた.第4層は付着部で軽度の肥厚を認めるのみで,第5層に不整像を認めなかったため,深達度は固有筋層までと考えた.問題点は,腫瘤腹側表面の壁にも交通を疑う部分を認めたが,多重反射のため観察が困難であった点であった
【造影超音波検査】
肝嚢胞が肝転移でないこと,肝の他部位に小転移病変が存在しないことを確認するために造影超音波検査を行った.肝には嚢胞以外に明らかな転移を認めなかった.盲腸の腫瘤に造影超音波検査を行ったところ,造影早期より壁が明瞭に造影され,腫瘤腹側表面を含めて,壁の大部分が腫瘤と接しているのみであることがわかった.さらに,造影される第1-2層(粘膜固有層)が,腫瘤背外側部で断裂し,第3-5層(粘膜下層,固有筋層,漿膜下層)が腫瘤にむかって彦こまれていた.第5層の凹凸を認め,深達度は漿膜下層ないし漿膜外に至っている可能性があった.しかし,腫瘤の可動性が良好である点から,周囲組織への癒着は乏しいものと推察した.また腫瘤の壁付着部近傍に小リンパ節を認め,転移を疑った.
【手術所見】
盲腸に腫瘤像を認め,2型進行大腸癌と診断された.深達度は漿膜下層(ss)で,リンパ節転移は1群で陽性だった.H0,M0,P0であった.
【考察】
超音波検査を行う上で,B mode所見が非常に重要であることは論を待たない.しかし超音波検査は,多重反射やサイドローブなどのアーチファクトの影響がある.そのため,時に詳細な観察が困難な場合がある.このような場合,造影超音波を行い,その所見とB mode画像を比較すると,観察困難な部位の評価が可能になることがある.本症例は造影超音波検査がB mode画像の欠点を補い,肉眼診断,深達度診断に役立ったと思われた.今後,症例を重ねて検討したい.
【結語】
造影超音波検査がB mode画像を補完すると思われた大腸癌の1例を経験した.