Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管1

(S420)

腸重積を引き起こした原発性空腸腺癌の一例

A case of Adenocarcinoma of the Jejunum Causing Intussusception

沖野 久美子, 照澤 和仁, 酢谷 充寿, 川江 孝子, 木元 俊一, 伊藤 あずさ, 坂 祐輝, 池田 亮輔

Kumiko OKINO, Kazuhito TERUSAWA, Mithutoshi SUYA, Takako KAWAE, Syunichi KIMOTO, Azusa ITO, Yuuki SAKA, Ryousuke IKEDA

札幌東徳洲会病院生理検査室

Department of physiology, Sapporo Higashi tokushukai hospital

キーワード :

【はじめに】
腸重積は成人には比較的稀な疾患であり,小児と異なり器質的疾患が原因であることが多い.今回我々は,腹部超音波検査における腸重積の発見をを契機に,診断・治療に結びついた原発性空腸癌の一症例を経験したので報告する.
【症例】
82歳男性
【主訴】
嘔気
【既往歴】
小脳梗塞,虫垂炎術後,Af,CRBBB 糖尿病 高尿酸血症 鉄欠乏性貧血 高血圧
【現病歴】
5日前から嘔気.食欲低下傾向.来院までに3回嘔吐がみられ,明らかな吐血は認めない.左側を下にして横になると嘔気増強を認める.
【腹部超音波検査所見】
十二指腸上行部〜十二指腸空腸部に腸重積像を認める.十二指腸の一部が肛門側腸管の内腔に嵌頓した状態であった.胃から十二指腸水平部には腸管拡張を認めた.
【腹部CT検査】
十二指腸上行脚に腫瘤性病変と,それに伴う腸重積を認めた.胃から十二指腸水平脚まで拡張しており,腫瘤に伴う腸重積による閉塞を疑った.
【上部消化管造影X線検査所見】
十二指腸水平脚でトランス靭帯手前にかに爪様ともとれる狭窄を認めた.ガストログラフィンの通過は困難であった.50mm大の腫瘤様の陰影を認めるが腸重積による変化とも捉えられた.
【上部内視鏡検査所見】
十二指腸水平脚に隆起性病変を認めた.立ち上がりは急峻で,外観上は上皮性の腫瘍が疑われた.
【血液生化学検査】
末梢血液ではWBC:6600/μl,RBC:308×104/μl,Hb:11.3g/dl,Hct:34.3%と軽度貧血とCRP:0.78mg/dlと軽度の炎症反応を認めた.
【手術所見】
十二指腸から空腸に移行する部位(トランス靭帯直下)に大きさ4cm大,広基性の腫瘍があり通過障害の原因となっていたため,腫瘍を含む空腸を15cm切除し,空腸を端端吻合した.
【病理組織学所見】
Type 1 型を呈す隆起性腫瘍(5.0×7.0×1.5cm).高分化腺癌で,深達度は漿膜下,脈管侵襲やリンパ節転移は見られずpStage II, Cur-Aの切除 であった.
【まとめ】
原発性空腸腺癌が誘引と考えられる成人腸重積症を経験し その診断に超音波検査が有用であった.