Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:膵2

(S419)

20mm以下の浸潤性膵管癌28切除例の超音波像

Ultrasonographic findings of 28 resected cases with invasive ductal carcinoma of the pancreas within 20mm in size

小林 幸子1, 木村 裕美1, 蓮尾 茂幸1, 宮越 基1, 中島 幸恵1, 中村 智栄1, 橋本 碧1, 武田 昌基1, 山川 博史1, 水口 安則2

Sachiko KOBAYASHI1, Hiromi KIMURA1, Shigeyuki HASUO1, Motoi MIYAKOSHI1, Yukie NAKAJIMA1, Tomoe NAKAMURA1, Midori HASHIMOTO1, Masaki TAKEDA1, Hiroshi YAMAKAWA1, Yasunori MIZUGUCHI2

1国立がん研究センター中央病院病理科・臨床検査科, 2国立がん研究センター中央病院放射線診断科

1Clinical Laboratory, National Cancer Center Hospital, 2Department of Diagnostic Radiology, National Cancer Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
浸潤性膵管癌において良好な予後を規定する因子のひとつとして,より小さい腫瘍径での発見が挙げられる.近年では超音波画像診断能の向上により,20mm以下で発見される浸潤性膵管癌が増加している.今回われわれは,病理組織診断で腫瘍径が20mm以下と診断された28症例,28病変の超音波像を検討したので報告する.
【対象と方法】
2006年3月から2011年9月までの期間に当院で切除され,20mm以下の浸潤性膵管癌と病理組織診断された28病変を対象とした.年齢は40〜81歳(平均68.1歳),男女比15:13である.超音波所見(大きさ,形状,境界,輪郭,内部エコー,尾側主膵管拡張の有無,腫瘍内または近接する周囲の嚢胞状成分の有無)について検討した.超音波診断装置は東芝社製Aplioを使用した.12病変にレボビストを用いた造影超音波を施行した.
【結果】
28病変中,24病変(85.7%)はBモードで腫瘍を認めた.残り4病変はBモードでは主膵管拡張と膵管の途絶像のみ認め,腫瘍像の描出困難であった.この4病変のうち3病変に造影超音波を施行した.2病変は途絶部位に一致して造影効果を認め,1病変は途絶部位に一致してhypovascular areaを認め,いずれも腫瘍像を確認できた.これらの3病変を含め存在診断可能であった27病変は,腫瘍径8〜22mm(平均15.3mm),存在部位は膵頭部14病変,膵体部12病変,膵尾部1病変であった.Bモードにて腫瘍を描出可能であった24病変の,形状は不整形23病変,類円形1病変,境界明瞭15病変,境界明瞭一部不明瞭5病変,境界不明瞭4病変であった.24病変すべて輪郭不整,低エコーを呈していた.24病変中,棘状突起様構造を9病変(37.5%)に認めた.尾側主膵管拡張は,28病変中20病変(71.4%)に認めた.主膵管径は,3〜15mm(平均6.5mm)であった.主膵管拡張を伴わない8病変の腫瘍存在部位は,膵頭部足側端2病変,膵鉤部1病変,膵頭部1病変,膵体部3病変,膵尾部端1病変であった.嚢胞状成分は,28病変中4病変(14.2%)に認めた.造影超音波を施行した12病変は,11病変で何らかの造影効果を認め,1病変は造影効果を認めなかった.超音波診断の内訳は,浸潤性膵管癌24病変,主膵管型膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)2病変,転移性膵腫瘍1病変,質的診断困難1病変であった.病理診断では,腫瘍径は5〜20mm(平均16.6mm)であった.
【考察】
Bモードによる超音波所見の検討では,1病変を除き不整形,全病変にて輪郭不整,低エコーを示した.これは通常経験する浸潤性膵管癌と同様の所見であり,腫瘍径が小さい病変でも詳細に観察することで浸潤性膵管癌と診断可能と考える.尾側主膵管拡張を伴わない病変においても,病変の直接所見の詳細な観察が重要と考える.一方,主膵管拡張と途絶の間接所見のみ検出した3病変では,造影超音波を施行したことで腫瘍の存在を確認することができた.間接所見のみ検出し腫瘍が不明の場合には,造影超音波を施行することが必要と考える.
【結語】
腫瘍径の20mm以下の浸潤性膵管癌について検討した.今後より多くの病変を小さな腫瘍径のうちに発見し,早期に的確な治療に導くことが重要と考える.