堀 史子¹, 山下 信行², 谷本 博徳², 西浦 三郎³, 相島 慎一⁴, 上野 幸雄¹, 野村 秀幸²

Fumiko HORI¹, Nobuyuki YAMASHITA², Hironori TANIMOTO², Saburou NISHIURA³, Shinichi AIJIMA⁴, Yukio UENO¹, Hideyuki NOMURA²

¹国家公務員共済組合会　新小倉病院臨床検査科, ²国家公務員共済組合会　新小倉病院肝臓内科, ³国家公務員共済組合会　新小倉病院肝臓外科, ⁴九州大学形態機能病理学

¹Clinical Inspection Department, Fraternal Government officials Shinkokura hospital, ²Liver Department of internal medicine, Fraternal Government officials Shinkokura hospital, ³Liver Department of surgery, Fraternal Government officials Shinkokura hospital, ⁴Pathological morphological features, Kyusyu University

キーワード :

【目的】
造影超音波検査の主流である第二世代造影剤ペルフルブタンは,低音圧で気泡の造影信号が破壊されることなく検出される事から,経時的な観察が容易である．またMicro flow imaging （MFI）などの加算画像を用いることで,肝細胞癌内の微細な血管構造を描出することが可能となり,肝細胞癌の診断においてますますその有用性が高まってきた．しかし,造影超音波検査の血管相における造影信号が病理学的に何に由来するのかは未だ明らかにされていない．今回我々は肝細胞癌において造影信号と病理組織像とを比較し,造影信号と腫瘍内の血管との関連を検討した．
【対象と方法】
対象は2009年11月から2011年10月までに当院で造影超音波検査を施行し,肝切除術を受けた肝細胞癌症例33例のうち,対象である腫瘍の位置が体表から5cm以内で,造影超音波と肝切除標本との比較が可能であった8症例8結節である．内訳は男性6例,女性2例（平均68歳）,HBs抗原陽性1例,HCV抗体陽性5例で,初発6例,切除前2か月以内に肝動脈化学療法（Lip-TAI）を行ったものが1例,ラジオ波焼灼術（RFA）あるいは肝切除後の異所再発が1例であった．腫瘍径は1.3cmから4.0cm（平均1.9cm）であった．造影超音波検査は東芝メディカルシステムズ株式会社製Aplio XG SSA-790A,プローブはPVT-375BT（3.5MHz）を使用した．造影剤は推奨量の半量0.0075ml/kgを静注し,撮像モードはPulse Subtraction Imaging monitor View,Mechanical Index値 0.25〜0.3,Frame Rate 10〜15Hzで観察した．投与後約1分後まで観察を行なった後,対象結節を捉えた断面の造影剤を高音圧照射で破壊しMFIを用いて画像を作成した．画像はDICOMまたはAVI形式で超音波装置内に保存し,検査終了後,腫瘍内に見られる造影信号を検討した．切除標本は超音波断面と一致するような割面で切片を作成し,HE染色のほかCD34や抗αSMA抗体の免疫染色等を行って脈管の同定をし,血管（筋性動脈）の径の測定及び腫瘍結節内の分布を調べた．
【結果】
造影超音波検査のMFI開始1秒後において,比較的太い線状を呈する造影信号が各結節で1から13ヶ所観察された．次に超音波画像断面と一致するように作成した切片標本の組織像では,筋層構造を呈する短径100μm以上の血管が各結節において1から15個確認され,その血管周囲に胆管や門脈は見られなかった．MFI画像で見られた太い線状の造影信号と,同断面組織像で確認された100μm以上の血管はほぼ一致した分布を示しており,一致率は87.3％であった．
【考察】
造影超音波検査の血管相において,肝細胞癌結節内に観察される信号パターンと組織型が関連するとこれまでに報告されている．今回の検討から,造影超音波でDeadwoodパターン等の比較的太い造影信号が観察される結節内には,径100μm以上の筋性動脈の存在が推測される．