大道 清彦, 井上 陽介, 高橋 道郎, 金子 順一, 青木 琢, 阪本 良弘, 菅原 寧彦, 長谷川 潔, 國土 典宏

Kiyohiko OMICHI, Yousuke INOUE, Michirou TAKAHASHI, Junichi KANEKO, Taku AOKI, Yoshihiro SAKAMOTO, Yasuhiko SUGAWARA, Kiyoshi HASEGAWA, Norihiro KOKUDO

東京大学医学部附属病院肝胆膵外科

Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery Division, Graduate School of Medicine, University of Tokyo

キーワード :

【はじめに】
肝腫瘤性病変の切除術中において,B-modeだけでなく,contrast-enhanced intraoperative ultrasonography （CE-IOUS）やreal-time tissue elastography （RTE）も併用することにより,術中診断能向上が期待できる．今回我々は3者併用による術中診断が有用であった3例を経験したので報告する．
【症例1】
53歳男性．健診USにて肝腫瘤を指摘され,MRIにてS7に5cm大,1cm大のnonBnonC HCCの診断で,近医にて肝動脈化学塞栓療法施行後,右肝に新出病変が2ヶ所疑われた．手術目的に当科紹介受診し,EOB-MRIを施行したところ,S7の5cm大の腫瘤以外にEOB肝細胞相でのみ描出される病変を計4か所認めた．主病変の切除および他の小病変の術中診断目的に手術施行．S7主病変以外で,CE-IOUS Kupfer相で染まりぬけを認めるものはS8の5mm大の病変のみ．RTEにても同病変は肝実質より硬く,主病変以外にHCCはS8の当該結節のみと判断しS8部分切除を追加．S8切除検体に5mmの病変を認め,病理診断もHCCであった．切除後4か月経過し,残肝再発は認めていない．
【症例2】
72歳男性．S状結腸癌および横行結腸癌の精査中,CT,EOB-MRIにて肝内に1.3cm大（S8/5）,0.7cm大（S6）の2個の転移を認め,S状結腸切除術・結腸右半切除術,肝部分切除術を施行．触診,B-mode IOUSにてS6横隔膜側に6mm大,さらにCE-IOUSにてS8ドーム下に6mm大の新出SOLを認めた．いずれの病変もRTE施行し,腺癌パターンの硬さを示した．新出SOLも転移と判断し計4か所の部分切除施行．全摘出標本で腫瘍を認め,中分化管状腺癌の診断であり大腸癌の肝転移として矛盾しなかった．切除後4か月経過し,残肝再発は認めていない．
【症例3】
卵アレルギーを有する79歳女性．CTにて肝S4・S5に腫瘤指摘されたため当院紹介．CTにて肝両葉に最大3.5cmまでの多血性結節を8個認め,Neuroendocrine tumor（NET）,血管肉腫,肝内胆管癌が疑われた．MRIではT2low/肝細胞相low/ DWI highなSOLを2ヶ所（S4・S5）認めた．PETでは肝2か所（S4,S5, SUVmax11.7）,胃,結腸に集積亢進を認めたが,経肛門Double Balloon Endoscope （DBE）,経口DBEでは消化管に原発巣認めなかった．非機能性NETを第一に疑い,診断確定も兼ねて手術の方針となった．術卵アレルギーのため術中CE-IOUSは施行しなかったが,RTEを施行し,腺癌パターンの硬さを示し,同2ヶ所に対し肝部分切除術を施行（術中迅速診断にて腺癌）．他の病変は1cm程度で背景肝と同硬度であり,血管腫と判断し切除せず．最終病理で肝内胆管癌の診断となった．術後1か月経過し,今後術後補助化学療法を行う予定である．
【結論】
肝切除術中には視触診・B-mode IOUSだけでなく,CE-IOUS及びRTEも併施する,hybrid US diagnosisにより,術中に新規小病変の発見や触知不能なmm単位の小結節に対しても良悪の鑑別の精度が向上することが期待される．