乙部 克彦¹, 竹島 賢治¹, 高橋 健一¹, 安田 英明¹, 安田 慈¹, 熊田 卓², 桐山 勢生², 豊田 秀徳², 多田 俊史², 金森 明²

Katsuhiko OTOBE¹, Kenji TAKESHIMA¹, Kenichi TAKAHASHI¹, Hideaki YASUDA¹, Shigeru YASUDA¹, Takashi KUMADA², Seiki KIRIYAMA², Hidenori TOYODA², Toshifumi TADA², Akira KANAMORI²

¹大垣市民病院診療検査科, ²大垣市民病院消化器内科

¹Department of Clinical Research, Ogaki municipal Hospital, ²Gastroentelology, Ogaki municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
IVR-CT（interventional radiology- computed tomography）は肝腫瘍の動脈血流と門脈血流を個別に評価可能な唯一の画像診断として,肝腫瘍診断のgold standardとされている．典型的な肝細胞癌（HCC：Hepatocellular carcinoma）はCTAP（computed tomography arterial portography）で腫瘍部の門脈血流が欠損し,CTHA（computed tomography hepatic arteriography）で早期濃染がみられる．一方造影エコーでは,血管相での早期濃染,後血管相での欠損像が特徴である．今回我々は,造影エコーにて腫瘍の早期濃染が確認されIVR-CTにて早期濃染が確認できずHCCの診断に至らなかった4症例について報告する．
【対象】
2008年1月から2011年8月まで,造影エコーにて腫瘍の早期濃染が確認され,かつ造影エコー前後1ヶ月以内にIVR-CTがなされたHCC289症例,341結節中,IVR-CTにて早期濃染が確認できなかった4症例4結節である．
【方法】
使用超音波装置はToshiba Aplio XGを用い,使用造影剤はSonazoid^TMを推奨量の1/2（0.0075mL/Kg）を使用し,撮像条件は適宜変更して行った．IVR-CTシステムはToshiba Interventional-CTであり,血管造影装置はAngiorex BLA-800A,CT装置はX-visionReal （Single Helical CT）を用いた．造影剤濃度は150mgI/mL（300mgI/kg製剤を倍希釈したもの）を使用した．CTAPは上腸間膜動脈（SMA）より70mLを2.0mL/secで注入しDaley 30secで撮像した．CTHAは総肝動脈（CHA）より25mLを1.2mL/secで注入しDaley 10sec＋45secの2phaseを撮像し腫瘍濃染を確認した．CT画像は5.0mm厚,5.0mm間隔のaxial像のみで評価を行った．
【結果】
造影エコーで早期濃染がみられたHCC341結節中IVR-CT で早期濃染が確認されたものは337結節（98.8％）であり,早期濃染が確認できなかった症例はわずかに4結節（1.2％）であった．このうち2結節はHCCの存在位置がS1とS7の肝表面であり下横隔膜動脈が栄養血管であると推測されたが手技的に早期濃染が確認できなかった．また1結節は存在位置がS8でCTAPでは結節内の門脈血流の低下がみられHCCの存在は疑われたがCTHAではシャントにより区域性に動脈血流が低下し腫瘍濃染が確認できなかった．残りの1結節は存在位置がS2であり,心臓の拍動によるモーションアーチファクトにより腫瘍濃染が確認できなかった．
【考察】
各種画像診断にてHCCが疑われているにも関わらずIVR-CTでは肝の血流動態やHCCの栄養血管が選択できないといった手技的な問題でHCCの診断が困難な症例をしばしば経験する．また今回経験した4結節中2結節はDynamic MRIでも早期濃染が確認されておらず,造影エコー検査は,腫瘍の早期濃染を確認するうえで必要不可欠な手法と再確認された．