Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・症例1

(S404)

自然経過中に縮小または消退を来したFNHの3例

Marked tumor size reduction of Focal Nodular Hyperplasia:three case reports

一森 美生江, 和久井 紀貴, 高山 竜司, 金川 武徳, 永井 英成, 渡邉 学, 飯田 和成, 五十嵐 良典, 住野 泰清

Mioe ICHIMORI, Noritaka WAKUI, Ryuji TAKAYAMA, Takenori KANEKAWA, Hidenari NAGAI, Manabu WATANABE, Kazunari IIDA, Yoshinori IGARASHI, Yasukiyo SUMINO

東邦大学医療センター大森病院消化器内科

gastroenterology, Toho university omori medical center

キーワード :

症例1は45歳女性.1995年にALT上昇を認め,腹部超音波検査を施行.肝S5/8に45mmの低エコー腫瘤を認めたが妊娠5週目であったため,細径針生検で悪性を否定するに留め,出産を待って,腹部CT,造影超音波検査,16G生検針による狙撃生検等の精査を行った.腫瘍は,腹部CTでは早期相でhigh density,後期相でiso densityを呈し,カラードプラ超音波検査,レボビスト造影超音波検査では腫瘤中心から周囲に広がるspoke-weel-patternを呈した.肝生検による組織学的検査では中心瘢痕と思われる部分に太い血管が認められ,その周辺には細胆管の増生が認められた.以上よりFNHと診断し経過観察を行ったところ,13年間で45mmから24mmに縮小した.症例2は42歳女性.2009年検診の腹部超音波検査で肝S4に9mmの低エコー腫瘤を指摘された.Bモードで中心部にcental scar様の高エコースポットを呈し,ソナゾイド造影超音波検査ではspoke-weel patternを認めFNHと診断した.その後経過観察を行っていたが,2011年5月の腹部超音波検査で消退していた.症例3は56歳男性.1997年検診の腹部超音波検査で肝S5に20mmの低エコー腫瘤を指摘され,2000年に紹介受診となった.腹部CTでは早期相でhigh density,後期相でiso densityを呈した.カラードプラ超音波では腫瘤辺縁から中心へ向かう太い血管を認め,レボビスト造影超音波検査ではspoke-weel patternを呈しFNHと診断した.腫瘤は,4年後の腹部超音波検査で腫瘤径や血流動態に変化は認めなかったが,7年後の腹部超音波検査で消失していた.FNHは肝硬変のない肝臓にみられる良性の腫瘤性病変であり,血流異常に伴う過形成性変化が成因と考えられている.近年の画像診断法の進歩によりFNHに関する報告例が多数あり,経過観察中に腫瘤径の増大や縮小等の報告も散見される.腫瘤径変化の原因として,血管の拡張と血流の増加とともに腫瘤が増大したり,太い血管を結紮することにより腫瘤が縮小したとの報告があり,血流動態の変化が強く関与している可能性が考えられる.また,経口避妊薬内服や妊娠で腫瘤増大,経口避妊薬中止で腫瘤縮小の報告もあり,女性ホルモン動態の関与も示唆されている.症例1は出産歴,症例2は経口避妊薬内服歴があり女性ホルモン動態との関連の可能性が示唆された.また,症例3は経過中にARB内服が開始され,これによる血流動態の変化との関連の可能性が考えられる.以上興味のある経過を示したFNHを経験したので報告する.