山本 哲也¹, 松村 誠², 大竹 章文³, 渡邉 哲夫³, 三村 優子¹, 三原 千博¹, 数野 直美¹, 岡原 千鶴¹

Tetsuya YAMAMOTO¹, Makoto MATSUMURA², Akifumi OOTAKE³, Tetsuo WATANABE³, Yuuko MIMURA¹, Chihiro MIHARA¹, Naomi KAZUNO¹, Chizuru OKAHARA¹

¹埼玉医科大学国際医療センター中央検査部, ²埼玉医科大学国際医療センター心臓内科, ³日立アロカメディカル株式会社第一メディカルシステム技術本部 製品開発部 システム1課

¹Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, ²Cardiology Department, Saitama Medical University International Medical Center, ³System Section 1. Products R&D Dept. Medical Systems Engineering Division 1., Hitachi Aloka Medical,Ltd.

キーワード :

【はじめに】
前回,我々は連続波ドプラ法を使用できるリニア型探触子を日立アロカメディカル株式会社と共同開発し,臨床的有用性について報告した．しかし,高周波リニア型探触子では深さ3cm以内を走行する末梢血管に限られてしまう問題もあった．今回,腹部や腸骨部などの深部を走行する血管に対応可能な連続波ドプラ法を使用できるコンベックス型探触子を共同開発したので臨床的有用性について検討した．
【対象】
腹部あるいは腸骨部における血管エコー検査において高速血流が検出された30例．男性22例,女性8例,平均年齢は68歳．高速血流検出部位は35病変,その内訳は腹腔動脈6例,上腸間膜動脈8例,腎動脈4例,総腸骨動脈7例,外腸骨動脈9例,内腸骨動脈1例であった．
【方法】
コンベックス型探触子を用いてパルスドプラ法による最大血流速度2.0m/secを超える高速血流検出部位に対し,角度補正をしない状態でパルスドプラ法（コンベックスPW）と連続波ドプラ法（コンベックスCW）による最大血流速度を測定した．次にセクタ型探触子を用いて同部位を同定した後,連続波ドプラ法（セクタCW）による最大血流速度を測定し,それぞれの最大血流速度と測定に費やした時間を比較検討した．使用装置は日立アロカメディカル社製プロサウンド α7,探触子はセクタ型探触子UST-52105（1.5-4.3MHz）とコンベックス型探触子UST-9130（3.0-5.0MHz）を使用し,至適断面の設定や装置条件の調整はそれぞれ最適な状態とした．
【結果】
1.コンベックス型探触子を用いた連続波ドプラ法による最大血流速度の検出率：94.3％（35病変中33病変で測定可能）2.最大血流速度の相関性：コンベックスCWで測定した最大血流速度はセクタCW（相関係数r = 0.97）及びコンベックスPW（相関係数r = 0.86）と高い相関を示した．3.最大血流速度の平均値の比較：コンベックスPW（226.8±39.4cm/sec）＜コンベックスCW（247.4±38.4cm/sec）＜セクタCW（262.4±43.4cm/sec）の関係を示した．4.血流速度測定に費やした時間の比較：コンベックスCWの平均時間は平均45.0±22.5秒でセクタCW平均97.1±28.2秒の半分以下であった．
【考察】
同一症例においてコンベックスPWよりコンベックスCWの最大血流速度が高値を示した理由としては,超音波ビームの太さの違いによる影響が考えられる．また,コンベックス型よりセクタ型の最大血流速度が高値を示した理由としては,探触子の大きさ,形状がコンベックス型よりセクタ型の方が血流方向に対するビーム入射角度を小さくするのに有利である為と考えられる．以上のことから最大血流速度の平均値がコンベックスPW＜コンベックスCW＜セクタCWの関係を示したと考えられる．しかし,探触子を持ち替えることなく高速血流部位を描出しながら短時間で測定できるコンベックスCWに対し,不鮮明なモザイク血流を目印に探りながら測定するセクタCWでは,正確な高速血流ジェットを確実に捉えているかは不明である．
【結語】
コンベックス型探触子を用いた連続波ドプラ法での最大血流速度の測定は有用であり,検査を短時間で行う上でも有効性が高いと考えられる．