和田 春子¹, 小西 正三¹, 柏瀬 一路¹, 西尾 まゆ¹, 榊 雅之², 上田 恭敬¹

Haruko WADA¹, Shouzou KONISHI¹, Kazunori KASHIWASE¹, Mayu NISHIO¹, Masayuki SAKAKI², Yasunori UEDA¹

¹大阪警察病院循環器科, ²大阪警察病院心臓血管外科

¹Cardiovascular Division, Osaka Police Hospital, ²Department of Cardiovascular Surgery, Osaka Police Hospital

キーワード :

【はじめに】
有症状の高度大動脈弁狭窄症（AS）の予後は不良であり,可及的早期に手術を行うというのが一般的である．また,近年人口の高齢化に伴い,80歳以上のAS患者が増加しているが,これら高齢者に対する大動脈弁人工弁置換術（AVR）の手術のリスクと術後予後に関するデータは限られている．そこで,我々は80歳未満および,80歳以上の高齢者における高度ASの予後と慢性期心エコーの変化に対して検討した．
【方法】
2008年1月1日から2010年12月31までの間に当院でAVRを施行した54例の術前および術後1年後の心エコー変化や術後のイベントを比較した．
【結果】
80歳未満が37症例,80歳以上が17例であった．術後1年未満の総死亡（すべて院内死亡）は80歳以上では2例（12％）,80歳未満も2例（5.4％）であり比率は有意差を認めなかった．術前と1年後の心エコー所見を比較すると,どちらの群も,左室拡張末期径（LVDd）, 左室収縮末期径（LVDs）の平均値は低下し（術前LVDd: 80歳以上 49±5.7 vs. 80歳未満 50±6.3, 術後LVDd: 80歳以上 42±6.0 vs. 80歳未満 47±3.9）（術前LVDs: 80歳以上 31±7.3 vs. 80歳未満 32±7.0, 術後LVDs: 80歳以上 28±6.1 vs. 80歳未満 29±3.7）,駆出率（EF）の平均値は若干改善し（術前EF: 80歳以上 69±7.7 vs. 80歳未満 65±12, 術後EF: 80歳以上 71±8.5 vs. 80歳未満 68±7.4）,中隔壁厚（IVS）の平均値は減少していたが（術前IVS: 80歳以上 12±2.0 vs. 80歳未満 11±2.3, 術後IVS: 80歳以上 10±2.3 vs. 80歳未満 9.4±1.6）,両群間での変化量には差を認めなかった．
【結語】
AVR後の生存退院症例では,80歳以上の高齢者も,80歳未満症例と同等の心エコーデータの改善を示した．高齢者においても,重症ASは積極的な手術を考慮すべきである．