Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:虚血など

(S386)

糖尿病微小血管障害と潜在性心筋障害との関連;三次元Speckle Tracking法を用いた検討

Relation between severity of diabetic microangiopty and subclinical myocardial dysfunction

亀田 有里1, 石津 智子1, 榎本 真美2, 町野 智子1, 野上 佳恵2, 渥美 安紀子1, 山本 昌良1, 川村 龍1, 瀬尾 由広1, 青沼 和隆1

Yuri KAMEDA1, Tomoko ISHIDU1, Mami ENOMOTO2, Tomoko MACHINO1, Yoshie NOGAMI2, Akiko ATSUMI1, Masayoshi YAMAMOTO1, Ryo KAWAMURA1, Yoshihiro SEO1, Kazutaka AONUMA1

1筑波大学人間総合科学研究科 循環器内科, 2筑波大学循環器内科

1Graduate School of Comprehensive Human Sciences Cardiovascular Division, University of Tsukuba, 2Cardiovascular Division, University of Tsukuba

キーワード :

【目的】
糖尿病患者における心機能の異常を3次元スペックルトラッキング法を用いて解析し,糖尿病の三大微小血管合併症である腎症,網膜症,自律神経機能異常との関係を明らかとすることである.
【方法】
教育入院中の糖尿病患者87例(55±14歳,男性59例)および健常対象32例(52±16歳,男性16例)を対象とした.虚血性心疾患,不整脈,弁膜症および心エコー画像不良例は除外した.東芝社製ARTIDATM を用い2次元,3次元心エコー検査を行い,左室収縮能,拡張能の評価を行った.解析装置3D wall motion trackingTMを用いて3Dスペックルトラッキングを用い,円周方向ストレイン(CS),長軸方向ストレイン(LS),局所面積変化率(ACR)の測定を行った.また,糖尿病合併症の検査として眼底検査により網膜症を,尿中アルブミン,GFRにより腎症を,心電図R-R間隔変動係数(CVR-R)により自律神経機能の評価を行った.自律神経障害はCVR-Rの安静呼吸と深呼吸時で検査を行い,安静時が3.3以下のみのものを軽度(1点),安静時が3.3以下かつ深呼吸時と安静時の差が1.6以下のものを高度障害(2点)とした.網膜症はDavisのクラス分類により非増殖性1点,増殖性を2点,腎症は2期を1点,3期以降を2点と点数化し合計点数が1点のものをstage1,2点のものをstage2,3点のものをstage3,4点以上のものをstage 4とし合併症の重症度として評価を行った.
【結果】
糖尿病例は平均罹病期間10.4±8.3年, 平均HbA1cは10.2±2.4%, NT-proBNPは47.9±7.6pg/mLであった.LVEF(68.4±7.7,70.6±6.0%,ns),左室心筋重量係数(76.6±21,76.4±15g/m2,ns)は糖尿病患者群と健常者群で有意差を認めなかった.しかし,CS(-28.1±6.9,-31.7±5.7%,P=0.01)LS(-11.4±2.9,-15.8±2.1%,p<0.001)ACR(-37.9±7.4,-43.9±5.8 P<0.001)およびE’(9.8±3.0,13.9±3.1cm/s,p<0.001)は糖尿病患者で有意に低値であった.また,LS,CS,ACRはHbA1c, 罹病期間など臨床背景との関連は認めなかったものの,LSは糖尿病合併症重症度と有意に関連した(図).重回帰分析により年齢,収縮期血圧,左室心筋重量で補正した後も合併症重症度はLSの有意な独立規定因子であった.
【結論】
コントロール不良の糖尿病例において左室長軸方向の収縮の低下は,微小血管障害合併症の累積の程度と関連しており,左室長軸機能障害は心筋の微小血管障害を基礎病態とすることを示唆していると考えられた.