Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:新技術

(S377)

ドプラ法を用いた血流速度ベクトルマッピングの基礎的検討

Evalution of A Method of Blood-Flow-Vector Mapping Using Doppler

阿部 亮太1, 仁木 清美1, 菅原 基晃2

Ryota ABE1, Kiyomi NIKI1, Motoaki SUGAWARA2

1東京都市大学工学部 生体医工学科, 2姫路獨協大学医療保健学部 臨床工学科

1Department of Biomedical Engineering, Tokyo City University, 2Department of Medical Engineering, Himeji Dokkyo University

キーワード :

【背景】
現在,超音波ドプラ法で測定されている血流速度はドプラビーム方向の成分のみであるが,血流速度を他の方向の成分も含むベクトルとして表示しょうという試みがなされている.連続の式に実測されたドプラビーム方向の速度成分を取り込み,速度ベクトル場を得ようとする簡便な方法も提案されている.しかし,この方法で得られた速度ベクトル場は,血液のような粘性流体にとって最も重要なno slip condition(流体は固体壁の上ではすべらない)という境界条件を満たすことができないので,非現実的なものとなる.No slip conditionを満たすには,ナビエ・ストークスの方程式を用いる必要がある.この方程式は解を得ることの難しさもさることながら,得られた解の妥当性を確かめる方法は,実測された速度ベクトルと比較する以外にない. そこで,われわれは,超音波ドプラ法で血流速度ベクトルを実測することが可能かどうかを検討した.
【方法】
成人男性6人を対象として.リニアプローブを用いて頚動脈洞内の血流計測を行った.サンプリングボリュームは最小 (1mm3) とし,サンプル部位を固定し,ドプラビーム方向のステアリング角度を60から120度まで(90度は除く)10度ずつ変化させながら合計6回血流速度波形を記録した.これを3組に分け,駆出期の同一時相の血流速度を計測し,各組で合成速度ベクトル作成を行った.得られた合成ベクトルをB-mode画像上に描出した.
【結果】
頚動脈洞内で渦が発生している箇所では主流とは逆方向の合成ベクトルが確認された.また,血管壁付近では,血管壁の運動の影響を受けている速度ベクトルも確認することができた.しかし,近接する2点での計測では合成ベクトルの分離が困難であった.考えられる要因としては,測定の際被験者の体動により測定点がずれることや乱流の影響を受けることなどが挙げられる.
【結語】
リニアプローブのステアリング機能を用いて血流速度ベクトルを表示することが可能であるが,計測に際し頭部の固定と乱流成分の除去が必要である.
【参考文献】
1)岡田孝,モデル流を用いたVector Flow Mappangの精度評価,-Jpn J Med Ultrasonics Vol.36 Supplement (2009),pp310