Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:症例2

(S374)

心エコーで経過を観察しえたLibman-Sacks心内膜炎の1症例

A Case of Libman-Sacks Endocarditis Evaluated by Echocardiography

近江 晃樹1, 菅原 重生1, 高橋 徹也1, 齋藤 博樹1, 桐林 伸幸1, 佐々木 敏樹1, 新関 武史1, 金子 一善1, 伊藤 啓明2, 根上 智子2

Koki OMI1, Shigeo SUGAWARA1, Tetsuya TAKAHASHI1, Hiroki SAITO1, Nobuyuki KIRIBAYASHI1, Toshiki SASAKI1, Takeshi NIIZEKI1, Kazuyoshi KANEKO1, Michiaki ITO2, Tomoko NEAGARI2

1日本海総合病院循環器内科, 2日本海総合病院臨床検査室

1Department of Cardiology, Nihonkai General Hospital, 2Department of Clinical laboratory, Nihonkai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
Libman-Sacks心内膜炎は全身性エリテマトーデス(SLE)に合併する心病変であり,1924年LibmanとSacksにより剖検所見として報告された.剖検例の約40%に認めるとされ,僧帽弁を主体とした弁付近の心内膜表面に出現する非感染性疣贅を特徴とする.よってSLE症例では,心臓エコー検査によって疣贅及び併発する弁膜症の有無を確認することが予後に非常に重要である.今回Libman-Sacks心内膜炎の併発が考えられ, 内科的な治療にて症候がコントロールされたSLE及び皮膚筋炎によるoverlap症候群の一例を経験したので報告する.
【症例】
30歳代,女性.2011年5月から持続する発熱,下腿浮腫及び四肢体幹の近位筋力低下が認められ近医を受診した.自己免疫疾患が疑われたため当院紹介となり,精査加療目的に同年6月下旬に当院内科入院となる.筋生検,腎生検及び採血データ上の自己抗体などからはSLEと多発筋炎の診断基準を満たし,overlap症候群と診断してプレドニン60mg/日での治療を開始した.入院時に熱源検索として心エコーを施行したところ,僧帽弁に腫瘤と中等度僧帽弁閉鎖不全症が確認された.心不全の併発も認めたことから利尿剤投与を開始した.血液培養は陰性であり,感染性心内膜炎の診断基準を満たすような所見は確認されなかった.経食道心エコーでは僧帽弁前尖全体に不均一な肥厚を認め,後交連側を主体として可動性に富む14*15 mmの腫瘤を認めた.腫瘤の形態は典型的な感染性疣贅とは異なる印象であり,Libman-Sacks心内膜炎に伴う疣贅が考えられたが抗生剤も一時併用した.症候は順調に改善し,定期的な心エコー上は疣贅の増大や心不全増悪も認めず8月中旬に近医転院となる.4ヶ月後の経食道心エコーでは,僧帽弁弁尖の疣贅は明らかに縮小し,器質化によると思われる高輝度の弁尖肥厚が確認された.抗生剤も早期に漸減中止しており,経過からLibman-Sacks心内膜炎と考えられた.僧帽弁閉鎖不全症の増悪もなく利尿剤内服継続で心不全もコントロールされており外来にて経過観察中である.
【考察】
Libman-Sacks心内膜炎は術中所見や剖検で確定診断されることが多い.今回の症例においては,感染性心内膜炎とのエコー上の質的鑑別診断は困難であり,臨床経過から総合的に診断した.現在器質化したと思われる僧帽弁弁尖付近の血液乱流による心内膜ストレスが,今後弁膜症を悪化させる可能性があり,エコーによる注意深い経過観察が必要と考えられた.