Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:その他

(S368)

偶発的低体温症によって生じた壁運動低下が復温によって改善を認めた一例

A case of left ventricular general hypokinesis by accidental hypothermia accepted the improvement by rewarming

植木 博之, 平野 豊, 生田 新一郎, 宮崎 俊一

Hiroyuki UEKI, Yutaka HIRANO, Shinichirou IKUTA, Syunniti MIYAZAKI

近畿大学医学部附属病院循環器内科

assistant teacher, Division of Cardiology, Faculty of Medicine, Kinki University

キーワード :

低体温症によって一過性の壁運動異常を認め,復温によって心収縮能の改善が認められた偶発的 低体温症の一例を経験したので報告する.症例は84歳の男性.大腿骨頚部骨折・腸腰筋膿瘍・化膿性脊椎炎のために近医にて通院加療を受けていた.膝関節置換術の術前に行った心臓エコーでは心腔の拡大,壁運動異常,および病的逆流などの所見は指摘されていなかった.認知症でADLの低下を認めており,bed上程度の安静度であった.2011年1月中旬から食思不振を訴えるようになった.暖房の付いていない自室で眠っていたところ,同居している娘の呼びかけに応答がなく,意識レベル低下が見られたために救急搬送となった.来院時はLevel:Ⅲ-100 BT体温:28.0℃,BP:102/66mmHg,HR:30bpm SATは測定不可能であった.瞳孔の散大や左右差なく,項部硬直も認めず,四肢の腱反射の亢進・減弱は認められなかった.心電図では右脚ブロック,接合部調律であり,心エコーでは全周性の壁運動低下を認めていたが局所の壁運動低下は明らかでなかった.EFは48%であった.LVDdは54mmと明らかな拡大は認めていなかった.病的な逆流は認めなかった.頭部CTでは明らかな出血や梗塞を認めなかった.上記から弁膜症による心不全や心筋梗塞による意識レベルの低下は否定的と考えられた.その他に明らかな意識レベル低下を起こす原因は指摘できず,低体温症による意識レベルの低下を疑い入院管理を行った.入院後ただちに復温を開始した.血圧が低くカテコラミン,補液にて昇圧を行った.また高K血症,代謝性アシドーシスを認めていたために持続的血液濾過透析を開始した.入院翌日には36℃台まで復温でき,それに伴い意識レベルの改善を認め,心電図も接合部調律から洞調律に改善した.心エコーにおいても徐々に全周性の壁運動低下の改善を認められた.