加藤 歩¹, 松浦 秀哲¹, 高橋 礼子¹, 大平 佳美¹, 吉水 はるな¹, 毛受 秀子¹, 杉本 邦彦¹, 杉本 恵子³, 山田 晶², 岩瀬 正嗣²

Ayumi KATO¹, Hideaki MATSUURA¹, Ayako TAKAHASHI¹, Yoshimi OOHIRA¹, Haruna YOSHIMIZU¹, Hideko MENJO¹, Kunihiko SUGIMOTO¹, Keiko SUGIMOTO³, Akira YAMADA², Masatsugu IWASE²

¹藤田保健衛生大学病院臨床検査部, ²藤田保健衛生大学医学部循環器内科, ³藤田保健衛生大学医療科学部臨床生理学

¹Department of Clinical Laboratory Medicine, Fujita Health University Hospital, ²Department of Cardiology, Fujita Health University School of Medicine, ³Department of Clincal Physiology, Fujita Health University School of Health Sciences

キーワード :

【目的】
左房容積係数（LAVI）を僧帽弁輪部心房収縮速度波（A’）で除したLAVI/A’は左室機能障害に伴う左室充満圧および肺動脈圧の上昇と相関することが知られている．我々は,第82回本会にて虚血性心疾患患者を対象にLAVI/A’が予後予測に有用であることを報告した．今回,非虚血性心不全症例においてLAVI/A’の有用性を従来の拡張能評価の指標と比較し検討した．
【対象と方法】
2006年1月〜2008年5月に当院CCUへ入院した非虚血性心不全患者のうち,僧帽弁疾患,心房細動症例を除外した36例（平均年齢：66.7歳,男性：19例）を対象とした．測定機器はフィリップス社製SONOS 5500を使用した．組織ドプラ法は,心尖部四腔断面像においてサンプルボリュームを中隔側僧帽弁輪部に設定し拡張早期僧帽弁輪速度波（E’）とA’を計測した．左房容積は収縮末期の心尖部四腔像及び二腔像からbiplane Simpson 法により測定し,それを体表面積で除してLAVIとした．経過観察期間は平均844日間．全死亡を心事故と定義した．
【結果と考察】
経過観察期間中に7例の心事故が発生した．E/A,E/E’,LAVI,A’およびLAVI/A’を心事故群と非心事故群の2群間で比較した．心事故群のLAVI/A’は中央値7.8,非心事故群は中央値3.9と,心事故群は非心事故群に比べ,LAVI/A’は有意に高値を示した（p=0.001）．またLAVIは心事故群で中央値70.7ml/m2,非心事故群で中央値36.4ml/m2,E/Aは心事故群で中央値2.7,非心事故群で中央値0.8とそれぞれ心事故群で有意に高値であった（p=0.0005,p=0.0018）．ROC解析からカットオフ値をLAVI/A’ =6.4 （AUC=0.90）,LAVI=50.6ml/m2 （AUC=0.93）,E/A=2.0 （AUC=0.88）とした．Kaplan - Meier解析の結果,LAVI/A’上昇群において,有意に心事故発生率は高かった（p=0.0002）．また,LAVI,E/A上昇群においても有意に心事故発生率は高かった（p=0.0016,p＜0.0001）．比例ハザード単変量解析の結果,リスク比はLAVI/A’,LAVI,E/Aでそれぞれ1.33（p=0.0006）,1.07（p=0.0002）,3.64（p=0.0005）であった．
【結論】
LAVI/A’は非虚血性心不全患者において予後評価に有用である可能性が示唆された．