Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状

(S356)

腫瘍良悪性診断の高精度化に向けたMobility Imagingの検討

Development of Mobility Imaging for Accurate Differential Tumor Diagnosis

吉川 秀樹1, 田中 智彦1, 鈴木 麻由美1, 脇 康治2

Hideki YOSHIKAWA1, Tomohiko TANAKA1, Mayumi SUZUKI1, Kouji WAKI2

1日立中央研究所ライフサイエンス研究センタ, 2日立アロカメディカル第二メディカルシステム技術本部

1Life Science Research Laboratory, Hitachi, Central Research Laboratory, 2Medical System Research Section2, Hitachi-Aloka Medical

キーワード :

【背景】
腫瘍の良悪性を判断する上で,周辺組織への浸潤は重要な情報の1つである.その評価方式として腫瘍の動きやすさ(mobility)に注目している.浸潤癌の場合,腫瘍と周辺組織との結合が強いためmobilityは低くなる.一方で良性腫瘍の場合には境界部で滑るような動きをするため,mobilityは高くなる.これまでに摩擦係数が異なる二層ファントムによりmobilityが浸潤度を評価する上で有効であることを確認している[1].Mobilityの評価は,二次元の動きベクトル計測に基づく.取得した画像面内にベクトル計測領域を配置し,輝度パタンが類似する領域を次画像内から探索することで着目対象の動きを示すベクトル場が構成される.
【目的】
動きベクトルの計測精度はmobilityの評価精度に直結する.従ってSpline補間を利用したサブピクセル精度の動き計測方式[2]を検討し,ファントム実験により精度検証を行う.また,ベクトル計測の結果からmobilityを評価する方式としてAxial-Shear Strain(ASS)[3]に注目し,画像化を試みて臨床的な有用性を検討する.
【実験】
均一な媒質内に手動で回転可能な領域を配置したファントムを作成して評価を行なった(図1(a)).回転させた状態で超音波診断機(日立製)からB像データを取得し,ベクトル場を構成した.ベクトル場からASSを計算し,値に応じてカラー化したMobility imageを構成した.
【結果】
ベクトル場とASSに基づくMobility imageを図1に示す.目視で視認できる回転領域の境界と動きがベクトル場に反映されていることを確認できる.また,図中A-B上のベクトル量をプロットした結果を図2に示す.Spline補間の導入により,ピクセル単位の丸め誤差が軽減している.また,Mobility imageには開発目的である滑りの境界面が明瞭に描出できている.色の違いは滑りの方向,濃度は大きさを示しており,本画像から滑り面の境界と性状を視覚的に捉えられることが判った.
【結論】
腫瘍の良悪性診断の高精度化に向けて,浸潤を評価するMobility imagingを検討した.Spline補間に基づくサブピクセル精度のベクトル推定,及びASSに基づく境界評価法により,腫瘍と周辺組織との結合状態を視覚的かつ定量的に捉えることが可能である.本技術により,非侵襲かつ客観的な情報に基づく鑑別診断が期待される.
【参考文献】
[1]東 隆,他:83th JSUM
[2]B. Geiman, et.al.,:IEEE proc. (1997)
[3]H. Xu, et.al.,:UMB (2010)