中村 高太郎¹, 浅井 歩¹, 森山 達也¹, 高田 啓介¹, 吉澤 晋¹, 梅村 晋一郎^{1, 2}

Kotaro NAKAMURA¹, Ayumu ASAI¹, Tatsuya MORIYAMA¹, Keisuke TAKADA¹, Shin YOSHIZAWA¹, Shin-ichiro UMEMURA^{1, 2}

¹東北大学大学院工学研究科・電気・通信工学専攻, ²東北大学大学院医工学研究科・医工学専攻

¹Department of Electrical and Communication Engineering, Tohoku University, ²Department of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
強力集束超音波の治療領域は米粒大程度と非常に小さく,患部全体を治療するには数百回程度以上照射が必要であり,長時間を要し,非効率的である．そこで,その効率をより高めるために,キャビテーションによる超音波の加熱増強効果に着目し,広範囲にキャビテーション気泡を生成したのち,広範囲焦点超音波で同時にそれらを体積振動させることにより,広範囲でのキャビテーションの加熱増強効果を利用する焼灼法を開発した．
【方法】
キャビテーションは強力な超音波によって微小な気泡が発生する現象で,キャビテーション気泡の寿命は数十 ［ms］と非常に短い．本手法の基礎として,Triggered HIFUというキャビテーションによる超音波の加熱増強効果を利用した焼灼法がある．これは最初にTrigger Pulseと呼ばれる通常のHIFUに比べ非常に高い強度の超音波を数 ［μs］から数 ［ms］の短い間照射し,キャビテーションを発生させる．その後,Heating Wavesと呼ばれる通常のHIFUに比べ低い強度の超音波を数秒もの長い間照射し,生成したキャビテーション気泡を振動させ加熱を増強する方法である．本手法ではこのTriggered HIFUを4箇所に拡張した．4箇所に拡張するため,キャビテーション気泡の寿命を考慮し,瞬時に焦点位置・形状を変更可能であるアレイトランスデューサーを用いた．駆動周波数は1.0 ［MHz］で,局所的にキャビテーション気泡を発生させるTrigger Pulseを100 ［μs］毎に焦点位置を変え4箇所に照射し,このサイクルを30回繰り返した後,10 ［s］の間4箇所に焦点をもつHeating Wavesを照射した．照射対象はゲルファントム,及び鶏ささみ肉で,ゲルにはウシ血清アルブミンと呼ばれるたんぱく質を混ぜ,60 ［℃］以上になると熱変性し,白濁して目視で分かるようにした．Trigger Pulse,Heating Wavesの強度をそれぞれゲルの焼灼実験では1200 ［W/cm2］,300 ［W/cm2］,ささみ肉の焼灼実験では4000 ［W/cm2］,250 ［W/cm2］とした．本手法の比較対象として,Trigger Pulseなしの場合も行った．
【結果】
本手法を用いることにより,ゲルにおいては図の（a）,ささみ肉においては図の（b）のような結果が得られた．ゲルの焼灼において本手法の焼灼領域の方が大きいことは明らかだが,ささみの焼灼においても体積で4倍もの差がでた．これらの結果からキャビテーションの加熱増強効果を用いた本手法の優位性を示すことができた．