Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

奨励賞演題:体表臓器

(S327)

造影超音波診断におけるDCISと乳腺症の比較検討

Conparison DCIS with Mastopathy in Contrast Enhanced Ultrasound

中村 卓1, 平井 都始子2, 小林 豊樹1, 高橋 亜希3, 武輪 恵3, 伊藤 高広3, 中島 祥介1

Takashi NAKAMURA1, Toshiko HIRAI2, Toyoki KOBAYASHI1, Aki TAKAHASHI3, Megumi TAKEWA3, Takahiro ITO3, Yoshiyuki NAKAJIMA1

1奈良県立医科大学付属病院消化器外科・小児外科・乳腺外科, 2奈良県立医科大学付属病院中央内視鏡・超音波部, 3奈良県立医科大学付属病院放射線科

1Depertment of Surgery, Nara Medical University, 2Depertment of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, 3Depertment of Radiology, Nara Medical University

キーワード :

我々は院内のIRBの認可を得て,2008年7月から2011年11月までにソナゾイドを用いた乳腺造影超音波検査を第Ⅱ相,第Ⅲ相臨床試験を含めて97例に実施している.乳腺領域の超音波診断においては非浸潤性乳管癌(以下DCIS)は超音波上,乳腺症と鑑別が困難な場合があり,広がり診断にも苦慮する.そこで,造影超音波がDCISと乳腺症の鑑別診断やDCISの広がり診断に寄与するかを検討した.
【目的】
DCISと乳腺症の鑑別診断やDCISの広がり診断における造影超音波の有用性を検討する.
【対象】
超音波Bモードで境界不明瞭な不整な低エコー域として描出された病変を対象とした.手術により病理診断が確定しているDCISおよびmicroinvasionが認められた乳頭腺管癌8例のうち,嚢胞内癌2例を除く6例(以下,すべてDCISと表記)と,マンモトーム生検で乳腺症と診断された4例を比較した.
【方法】
使用装置はLOGIQ E9およびLOGIQ7.造影剤はソナゾイドを用い,0.01ml/kgを静注した.Bモードで腫瘍を観察後,造影超音波を施行した.造影剤静注前から静注後約40秒は断面を固定して観察した.その後,病変全体をスイープして観察し,造影早期相の5~10秒程度の動画から積算画像を作成した.検討項目:1.DCISと乳腺症の造影効果,造影パターンの比較2.DCISと乳腺症の造影超音波と造影MRIとの比較3.DCISの造影範囲と病理学的病変範囲の比較
【結果】
1.DCISと乳腺症の造影効果,造影パターンの比較DCIS6病変はBモードで低エコーに捉えられる領域を含む広い範囲が早期から病変全体としては不均一に,不整形に周囲乳腺組織より強く造影された.また,濃染持続時間も比較的長かった.乳腺症の4例のうち3例ではゆっくりと周囲の乳腺と同程度の濃染の強さにそまり,病変としての範囲は同定困難だった.1例では均一に淡い濃染パターンを呈していた.2.DCISと乳腺症の造影超音波と造影MRIとの比較病変を造影MRIで評価できたものはDCIS 5例と乳腺症4例だった.DCISでは造影MRIでBranching Ductalパターンを示したものが4例あり,それらは造影超音波では背景乳腺より強く,内部不均一,不整型に濃染された.MRIでSegmentalに染まるが,non branchingパターンでheterogenous Clusterd, ring enhancementパターンを示すDCISは造影超音波では腫瘤様に濃染されたが,内部は不均一で辺縁粗造だった.乳腺症4例のうち,3例は造影MRIでNon mass, Difuseパターンだった.これらは造影超音波ではゆっくりと周囲の乳腺と同程度に染まり,病変としての範囲は同定困難だった.造影MRIでMassパターンを示す1例はMRI上,辺縁がSmoothで形はoval, washout Absentパターンだった.この 1例では造影超音波で均一に淡い濃染パターンを呈していた.3.DCISの造影範囲と病理学的病変範囲の比較限局性のDCISでプローブ内に病変を捉えることができた3例では造影範囲と病理学的な病変範囲を比較すると5mm以内の誤差で,範囲はほぼ一致した.
【考察】
DCISと乳腺症はBモードでは鑑別困難なことはあるが,造影超音波をおこなうことで早期の濃染の強さから両者の鑑別は可能と考えられた.ただし,造影MRIでの良悪性の鑑別には乳房全体の中での濃染範囲のパターンをみて判断することが可能であるのに対して,造影超音波ではプローブの範囲しか観察できない.そのため,Time Intensity Curveを描くなどして,造影早期の濃染スピードを評価することが肝要と考えられた.
【結語】
造影超音波はBモードでは意識しないと認識困難な病変の視認性の向上に寄与し,DCISと乳腺症の鑑別に有用であった.DCISの造影超音波像を蓄積・分析することで,浸潤癌における乳管内進展像の描出に応用である可能性が示唆された.