春木 伸彦, 竹内 正明, 芳谷 英俊, 大谷 恭子, 桑木 恒, 岩瀧 麻衣, 尾辻 豊

Nobuhiko HARUKI, Masaaki TAKEUCHI, Hidetoshi YOSHITANI, Kyoko OTANI, Hiroshi KUWAKI, Mai IWATAKI, Yutaka OTSUJI

産業医科大学第二内科学

Second Department of Internal Medicine, University of Occupational and Environmental Health

キーワード :

【背景】
Adaptive servo-ventilator （ASV）は,睡眠呼吸障害を合併する心不全患者に対する新たな非侵襲的陽圧換気デバイスであり,睡眠呼吸障害の治療のみならず,慢性期の左室駆出率（LVEF）を増加させることが報告されている．2DSTE法によるストレイン値は,LVEFよりも鋭敏に左室収縮能を評価する事が可能である．
【目的】
慢性心不全患者におけるASV療法が,左室収縮能に及ぼす急性および慢性の効果を,2DSTEによるストレイン値を用いて評価すること．
【方法】
対象は適切な薬物療法またはデバイス治療を行われているにも関わらずNYHAⅡ度以上の心不全症状を有し,LVEFが50％以下の患者15例．急性効果の検討は,ASV導入前の血行動態（心拍数・血圧）および,心エコー図検査による左室容積（拡張末期・収縮末期）・左室駆出率を測定し,心尖三段面（四腔,二腔,長軸像）から2DSTEを用いて左室全体および局所（基部,中部,心尖部）のLongitudinal strain（LS）を計測した．引き続きASVを30分間使用した後,同様の項目を測定した．慢性効果は,全例においてASV療法を在宅で一日4時間以上使用継続し,6ヶ月後に再度心エコー図検査を施行し,心機能を同様の方法で評価した．
【結果】
30分間のASV療法により,心拍数および収縮期血圧は有意に減少した．左室駆出率や左室全体および局所のLSは有意な変化を認めなかった（表）．一方,ASV導入後慢性期には,左室拡張末期容積（162±54ml→120±45ml, p＜0.0001）・収縮末期容積（116±48ml→72±43ml, P＜0.0001）とも有意な減少を認め,左室駆出率は有意に増加した．さらに左室全体および局所のLSも有意な増加を認めた（表）．またASV導入前の心拍数や慢性期の左室容積減少率と慢性期のLS改善率の間に有意な相関を認めた．
【結語】
慢性心不全におけるASV療法は,急性には心拍数・血圧を減少させ,導入後慢性期には左室容積を減少させるだけでなく,左室全体および局所の収縮能を改善する．