Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 体表臓器
パネルディスカッション7 乳腺疾患における硬さ評価の有用性

(S306)

ARFIによる硬さの評価

Combination of elastography and tissue quantification using ARFI technology for differential diagnosis of breast masses

戸崎 光宏

Mitsuhiro TOZAKI

亀田メディカルセンター乳腺科

Breast Center, Kameda Medical Center

キーワード :

【目的】
近年,音波放射力積(ARFI: acoustic radiation force impulse)を利用して,音響的に組織を圧迫して歪みを画像化する方法が開発された.ACUSON S2000(Siemens社製)に搭載されたVirtual Touch Tissue Imaging(VTTI)は,柔らかい組織ほど変位が大きく高輝度に表示され,硬い組織では変位が小さく低輝度に表示される.一方,Virtual Touch Tissue Quantification (VTTQ)においては,ARFIを利用して生体内部でshear waveを発生させる.硬さを測定したい部位に5mm×5mmの大きさのROIを合わせ,計測トリガボタンを押すと1秒以内にROIの内部に発生したshear waveの伝搬速度が測定され画面上に表示される.今回,乳腺腫瘤の良悪性の鑑別に対して,VTTIおよびVTTQを組み合わせた診断基準の作成を試みたので報告する.
【対象と方法】
対象は,細胞診または組織診断の得られた腫瘤性病変161例(良性70例,悪性91例).まず,VTTIを視覚的にパターン分類し,その後,shear waveの伝搬速度のカットオフ値を算出した.
【結果】
VTTIでは以下の5つのパターンに分類可能であった.Pattern 1:病変が周囲組織と同じ硬さ.Pattern 2:病変内部が均一に高輝度を示す.Pattern 3:病変内部が高輝度と低輝度で不均一.Pattern 4a :病変内部が低い輝度を示し,かつ低輝度範囲がB-modeと同じ大きさ.Pattern 4b:病変内部が低い輝度を示し,かつ低輝度範囲がB-modeより大きく表示.Pattern 1(n=13)とPattern 2(n=5)は全例良性で,Pattern 4b(n=43)は全例悪性であった.Pattern 3 とPattern 4aを示す100例(良性52例,悪性48例)のshear wave伝搬速度は,良性の平均が2.93 m/sec,悪性の平均が5.15 m/secで統計学的に有意差を示した(p<0.0001).カットオフ値を3.59 m/secとすると,sensitivity=91% (83/91),specificity=93% (65/70),accuracy=92% (148/161)であった.偽陰性は非浸潤性乳管癌7例と浸潤性小葉癌1例,偽陽性は線維腺腫3例と乳管内乳頭腫1例であった.
【考察】
これまで,われわれはVTTIとVTTQを個別に評価し発表・報告してきたが,VTTIおよびVTTQを組み合わせた診断基準の作成が重要と考えられた.VTTIの定性的な硬度判定は,パターン解析することで良悪性の鑑別に有用と考えられる.そして,良悪性が混在するパターンにおいては,VTTQ によるshear wave伝搬速度が良悪性の鑑別に有用な指標となる.今後は,本検討で得られたカットオフ値(3.59 m/sec)の再現性の検証,または診断基準の改訂が必要である.