英文誌(2004-)
特別企画 体表臓器
パネルディスカッション7 乳腺疾患における硬さ評価の有用性
(S304)
エラストグラフィの分類
Classification for Elastography
中島 一毅
Kazutaka NAKASHIMA
川崎医科大学総合外科学教室
Department of General Surgery, Kawasaki Medical School
キーワード :
最近の超音波診断技術においてTissue Elasticity Imaging(エラストグラフィ,ひずみ像)は最も特筆するものである.特に乳腺領域での期待感は大きい.これはマンモグラフィ検診の普及とともに乳癌が疑われる微小病変の検出が増えており,その多くは良性病変や正常バリエーションであることから,Bモード検査で鑑別できない病変にElastographyを加えることで,良悪性の鑑別精度が向上し,不必要な細胞診,針生検,VABなどの侵襲的検査から回避することが期待されている.2001年,椎名ら(現,京都大学)と日立メディコの共同研究により,硬さの情報を診断に用いるための,組織弾性イメージング手法が商用超音波診断装置に搭載された.本技術は「Real-time Tissue Elastography」と命名され,超音波による「エラストグラフィ」の最初の臨床技術となった.2007年には持田シーメンスメディカルシステムから「Elasticity Imaging」が,2008年にはやや方式が異なるが東芝メディカルシステムズから「Elastography」が,2009年にはGEヘルスケア・ジャパンや,フィリップスヘルスケアからも「Elastography」が発表された.さらに2010年にはSSIから剪断波を用い用手圧迫を使わない新しい手法のエラストグラフィも発表された.さらに国内では販売されていないが,ZONAREやSAMSUNG MEDISONからもエラストグラフィ搭載機が発表されている.これらはいずれもひずみ率や音速変化から,硬さを推計するという質的診断能力を,形態的診断である超音波領域に持ち込んだ概念は共通である.しかし,画像構成理論や開発の方向性も異なるようであり,得られる画像も異なる.最近は各手法を用いたエラストグラフィの臨床試験も報告されてきているが,原理,方式,画質の異なるものが同じエラストグラフィという言葉の中に含まれており,臨床現場には混乱を招いている.このため,日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)精度管理研究班では,エラストグラフィ精度管理チームを立ち上げ,研究中である.本チームは国内のエラストグラフィの臨床研究者,開発担当者から構成され,エラストグラフィの有用性,精度管理などをオープンに協議するものである.研究の最初は,方式による分類表を作成し,すでに国内外の学会にて報告している.現在は臨床的有用性の精度管理に向けて,研究を進めている.今回,この分類案を報告させていただき,エラストグラフィに対する理解を深めて頂きたい.