Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 腎泌尿器
シンポジウム10 泌尿器科癌取扱い規約にみる超音波診断基準の問題点

(S294)

腎腫瘍における超音波検査の現況と問題点

Current status of Ultrasonography in the diagnosis of renal tumor

陣崎 雅弘, 大熊 潔

Masahiro JINZAKI, Kiyoshi OHKUMA

慶應義塾大学医学部放射線診断科

Diagnostic Radiology, Keio University School of Medicine

キーワード :

 腎腫瘍の超音波診断は,腫瘍のエコー輝度,内部の均一性,偽被膜の有無,腫瘍内の嚢胞構造,後方エコーの減弱,ドプラ血流の有無などを指標として行われる.腫瘍のエコー輝度は central echo complexとほぼ同等もしくはより高い場合は血管筋脂肪腫のことが多いが,central echo complexと腎実質との間の高エコーの場合は,腎癌と血管筋脂肪腫の両者が混在する.内部エコーは,腎癌は不均一で,血管筋脂肪腫は均一な傾向がある.しかし,腫瘍のエコー輝度も内部の均一性も,サイズの小さい腎癌と血管筋脂肪腫の間では overlapがかなり見られる.一方,偽被膜や腫瘍内の嚢胞構造は腎癌を診断する有効な手掛かりであり,高エコー腫瘍で後方エコーの減弱を呈すれば,血管筋脂肪腫を強く疑うことができる.ただし,3cm以下のサイズに限ってみるとこれらの所見の出現頻度は,偽被膜は小腎癌の73%,腫瘍内の嚢胞構造は小腎癌の31%,後方エコーの減弱は血管筋脂肪腫の21%になる (Radiology 1998;209: 543-550).血流情報についてもパワードプラで検討してみたことがあるが,バスケット状の血流分布を示すものは腎癌で,腫瘍内に点状の信号を示すものは血管筋脂肪腫であることが多く,傾向としては有意差があるが,overlapはやはりある.総じてみると,腎癌の中でも淡明細胞型は偽被膜の有無や腫瘍内の嚢胞構造を手掛かりに比較的容易に診断できる.しかし,Bモードでもパワードプラを用いても,乳頭状腎癌と血管筋脂肪腫,嫌色素型腎癌とオンコサイトーマの鑑別は困難である.この10年くらい,dynamic CTやMRで薄いスライス厚での診断が容易になり,これらの検査での腎腫瘍の質的診断能が向上している.乳頭状腎癌と血管筋脂肪腫,嫌色素型腎癌とオンコサイトーマの鑑別が困難であることは超音波と同様であるが,少ない脂肪量を捉えて確実に血管筋脂肪腫を診断できることにおいて,超音波に比べた優位性がある.このため,病期診断のみならず質的診断においてもCTやMRが超音波を上回る.嚢胞性腎腫瘍はBosniak分類に基づいて診断が行われ,隔壁の厚さや増強効果の有無は診断の手掛かりである.造影超音波は,これらの診断能を向上させる可能性はあるが,コストと手間に見合うかどうかは検討してみないとわからない.腎腫瘍の診断において,血尿や腹痛などの症候性の場合は,CTを第一選択にしたほうがコストや手間の観点からは効率がよい.超音波は,無症候性のスクリーニングにおいては有用性が高く,また,小児で腎腫瘍を疑った場合は第一選択になると思われる.