Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 産婦人科
ワークショップ12 ここまで来た経会陰超音波

(S288)

経外陰超音波による分娩進行度の評価安全な急速遂娩術施行への応用に向けて

The assessment of fetal head descent with intrapartum translabial ultrasonography for the safe forced delivery

樋口 紗恵子1, 亀井 良政2, 武知 公博1, 坂巻 健3, 小林 浩一3, 上妻 志郎2

Saeko HIGUCHI1, Yoshimasa KAMEI2, Kimihiro TAKECHI1, Ken SAKAMAKI3, Koichi KOBAYASHI3, Shiro KOZUMA2

1公立昭和病院産婦人科, 2東京大学医学部附属病院女性診療科・産科, 3社会保険中央総合病院産婦人科

1Department of Obstetrics and Gynecology, Showa General Hospital, 2Department of Obstetrics and Gynecology, The University of Tokyo, 3Department of Obstetrics and Gynecology, Social Insurance Central Hospital

キーワード :

【目的】
鉗子遂娩術や吸引遂娩術などの産科手術を安全に施行するためには,その技術習得だけでなく分娩進行度(児頭先進部と児頭最大径の高さ,児頭回旋)の評価が重要である.分娩進行度を客観的に評価する方法として,近年,経外陰超音波検査法(Intrapartum Translabial Ultrasonography; ITU)が提唱されているが十分に普及はしていない.その理由の一つとして,内診ではHodgeの平行平面系の第三平面すなわち坐骨棘を通る面を基準として評価するのに対し,ITUでは産婦の恥骨を基準としているために,児頭の下降度を主観的に把握しづらいことが挙げられる.ITUの客観的評価法を日常臨床の内診所見と比較するためには,恥骨の他に仙骨岬角と坐骨棘の位置情報が必要となるが,ITUでは仙骨岬角や坐骨棘を描出することはできない.そこで本研究では,骨盤CT画像から恥骨・仙骨・坐骨棘の位置関係を調べ定量化することで,ITUの画面上に①Hodgeの平行平面と②骨盤峡部を標準平面として構築し,安全な産科手術を施行するための補助診断法となりうるか検討した.
【対象と方法】
婦人科疾患の精査や経過観察目的で撮影された日本人女性15人の骨盤CTのデータを利用した.対象患者の年齢は18-77歳(62±15歳:平均±標準偏差),身長は140-163cm(151.0±6.9cm),体重は44-67kg(53.6±7.0kg)であった.骨盤左半側を3Dに構築し恥骨・仙骨・坐骨棘を描出し,Hodgeの第一〜第三平面を同定し,第二平面と第三平面の距離を測定した.(図1).また,骨盤峡部入口部を明らかにするため,恥骨下縁と坐骨棘を通る平面と恥骨との角度も計測した(図2).
【結果】
①Hodgeの第二平面と第三平面の距離は20-50mm(39.2±8.53mm)であり,個人差が大きかった.また,身長との相関係数は0.23と低値であった.②恥骨下縁と坐骨棘を結ぶ線と恥骨との角度は104-117度(112.3±3.3度)であった.身長とは相関係数は0.34であり身長との相関はなかった.
【考察】
①Hodgeの平行平面は個人差が大きく普遍的な指標にはならず,ITU画面上にこれら平面を標準平面として構築することはできないと考えられた.②骨盤峡部入口部の位置は個体差が少なく,ITU画面上に標準面として表示することは可能と思われた.以上より,ITUは従来内診に頼ってきた分娩進行度の評価に客観性を付与し,児頭最大径が骨盤峡部にあるか否かを視覚的に確認した上で,より安全な産科手術を施行できると考えられた.