Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
ワークショップ6 消化器疾患診療における超音波Elastography の有用性

(S265)

超音波elastographyによる肝癌の分化度診断と局所治療の評価

The differentiated degree diagnosis of a HCC and the assessment of a partial treat by ultrasound elastography

平良 淳一, 今井 康晴, 森安 史典

Junichi TAIRA, Yasuharu IMAI, Fuminori MORIYASU

東京医科大学病院消化器内科

GASTROENTEROLOGICAL MEDICINE, TOKYO MEDICAL UNIVERSITY HOSPITAL

キーワード :

【はじめに】
組織の硬さを計測し組織性状を診断するElasticity imaging(弾性映像法)が注目を集め,多くの装置に搭載され急速に普及している.当科ではElasticity imagingに使用する超音波画像診断装置として「Aixplorer」(Supersonic imagine社製,キャノンマーケティングジャパン)を2010年7月より導入している.「Aixplorer」は定量的に組織弾性をリアルタイムで測定・表示することを可能にした次世代超音波診断装置である.
【目的】
近年,慢性肝疾患における肝線維化の程度(staging)を非侵襲的に評価することを目的としたElastographyに関する有用性の報告が数多くされている.しかし,肝腫瘍に対するElastographyの有用性の報告は未だ少ない.当科では肝臓領域,特に肝細胞癌(HCC)の診断や,ラジオ波焼灼療法(RFA)などの局所療法後の治療効果判定に役立つのではと考えている.症例数は十分ではないが当科での検討結果を報告する.
【方法】
対象は2010年7月から2011年8月までの間に当科にて組織学的にHCCと診断(経皮経肝針生検)され,Aixplorerを使用し腫瘍弾性係数測定を行った21症例21結節である.男性12例,女性9例,平均年齢69.7±9.0歳(49〜84),平均腫瘍径25.4±18.8mm(8.0〜75.0),背景肝の内訳はHBV1例,HCV13例,アルコール3例,NonB・NonC2例,IPH1例,PBC1例である.
【成績】
全症例の平均腫瘍弾性係数は19.4±17.2 kPa(0.96〜70.57)であり,腫瘍分化度別の平均腫瘍弾性係数は高分化型肝癌(5例)6.7±3.5kPa,中分化型肝癌(14例)18.8±12.3kPa,低分化型肝癌(2例)55.6±21.2kPaと分化度が進行するにつれ腫瘍弾性係数は高値となる傾向にあった(高分化:中分化P=NS,高分化:低分化P<0.01,中分化:低分化P<0.01).腫瘍径別についても平均腫瘍弾性係数を検討したが,腫瘍径20mm未満19.5±15.4kPa,20mm以上では19.4±20.2kPaと有意な差は認められなかった(P=NS).また,RFA等のHCCに対する局所治療後に治療部の硬度が上昇することが知られており,数症例にRFA前後でAixplorerによる腫瘍弾性係数測定を施行している.いずれもRFA後の焼灼範囲と考えられる部位の弾性係数が上昇し,カラーマップ上,焼灼の中心から放射状に赤から青へと変化する傾向を認めた.
【結語】
Elastographyは腫瘍の硬さを定量化し可視化することにより肝腫瘍性病変の鑑別や悪性度診断の補助,治療後に組織の硬さが変化することを応用し治療効果判定の一助になる可能性が期待できる.