Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
ワークショップ6 消化器疾患診療における超音波Elastography の有用性

(S262)

ウィルス性慢性肝疾患における各種超音波Elastographyの有用性に関する検討

Ultrasound Elastography for Chronic viral liver disease

斎藤 聡1, 窪田 幸一2, 伝法 秀幸2

Satosi SAITOU1, Koichi KUBOTA2, Hideyuki DENPOU2

1虎の門病院肝臓センター, 2虎の門病院分院臨床検査部

1Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital Kajigaya

キーワード :

【目的】
びまん性肝疾患におけるElastographyは肝硬度測定であり,肝生検に代わりうる肝線維化評価検査の位置づけである.Dynamic Elastographyは剪断波を測定する方法であり,機械的加圧を用いる方法と音響的加圧を用いる方法に分類される.Transient Elastography (TE)は機械的加圧を用いる方法でShear Wave Elastography (SWE)は音響的加圧を用いる方法である.SWEは剪断波の速度あるいは弾性値をカラーコードマップで表示するものである.一方,Acoustic Structure Quantification (ASQ)は肝線維化評価に関して,超音波診断における慢性肝疾患の内部エコーの粗さを定量化する手法で肝実質のスペックルパターンを,粗さの指標としてモード値とFocal Disturbance Ratio(FDR)で算出,定量評価するものである.この3種類の超音波による線維化評価法に関して,B型およびC型慢性肝疾患の臨床上,重要な要点である,肝硬変の拾い上げと癌化の2点に関して検討した.
【対象と方法】
対象は各種B型ないしC型慢性肝疾患1250症例.年齢27〜81歳(中央値56歳),男女比740:510,B型401例,C型849例.慢性肝炎の診断は肝生検・肝切除で肝硬変は臨床診断も含まれている.TEはフィブロスキャン (ver4・Echosens社製)のMプローブ,SWEはAixplorer (Super Sonic Imagine社製)のコンベックスプローブ,ASQはAplio(ver5・東芝社製)のコンベックスプローブを使用した.TEは右肋間より10回計測し,中央値とし,SWEは右肋間より体表より深度3.5cmにROIを設定し,各3回測定し,中央値を肝硬度とした.ASQも同一の右肋間から3回計測し,中央値のモード値およびFDRを算出した.血清学的な線維化マーカーとしてAPRI,FIB-4に関しても比較した.Child C肝硬変および進行肝癌症例は除外した.
【成績】
1.肝硬変の診断(同一検査日症例の比較):慢性肝炎(CH)166例,肝硬変(LC)98例における検討ではカットオフ値とAUROCはそれぞれTE 11kPa・0.94,SWE 12kPa・0.95,ASQ 118・0.75,ASQ(FDR) 0.26・0.78,APRI 0.5・0.88,FIB-4 1.25・0.79であり,TEとSWEの両者間の相関関係はr=0.91と高く,TEとSWEが両者の鑑別には優れていた.TEのみ皮下脂肪厚が2.5cm超かつ肝硬変症例では測定不能例が2例みられた.2.発癌症例の検討(TEによる検討):発癌128症例の肝硬度は6.4〜75kPaで中央値は21kPaであった.C型では6.8〜75kPaであったが,抗ウィルス療法によるSVR例を除くと9.8kPa以上の症例(中央値24kPa)であり,それ以下の症例はすべてSVR例であった.一方,B型では6.4〜28kPa(中央値19kPa)であったが,HBV-DNA4.0Logcopy/ml以下ではすべて11kPa以下であった.いずれも10kPa以下の発癌例はすべてトランスアミナーゼ正常例であった.
【結語】
Transient Elastography,Shear Wave Elastographyによる慢性肝疾患の肝硬度測定は肝硬変の拾い上げに有用であった.ウィルス性慢性肝疾患からの発癌に関してはウィルス量も加味した肝癌高危険群の囲い込みが重要であり,抗ウィルス治療が奏功し,肝硬度が低い群からもまれには発癌例がみられ注意が必要である.