Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
ワークショップ1 超音波内視鏡の進歩−診断と治療への応用−

(S256)

胆膵疾患における造影ハーモニック超音波内視鏡の有用性と限界

The clinical utility and limit of contrast enhanced harmonic EUS with Sonazoid in the diagnosis of Pancreato-biliary disease

菅野 敦

Atsushi KANNO

東北大学消化器内科

Division of Gastroenterology, Tohoku University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
造影超音波検査はreal timeに血流動態を観察できるmodalityであるが,胆膵疾患は病変が小さい場合が多く,また消化管に囲まれているため描出が難しい.造影ハーモニック超音波内視鏡(contrast enhanced harmonic EUS :以下CEH-EUS)は,これらの弱点を補うことが可能であることから,胆膵疾患への応用が期待されている.
【目的】
胆膵疾患におけるCEH-EUSの有用性を検討すること.
【対象】
2010年4月から2011年9月までCE-EUSを施行した胆膵疾患135例141回(膵癌46例,胆管癌23例,内分泌腫瘍(以下NET)14例,自己免疫性膵炎(以下AIP)10例(17回),IPMN12例,その他)
【方法】
超音波内視鏡はオリンパス社製GF-UE260AL5,観測装置はALOKA社製Prosoundα10を使用し,ExPHDモードを用いた.ソナゾイド®は0.015ml/kgを静注し,造影時のMI値は0.3とした.造影時の画像は超音波装置内のハードディスクに保存し,後に付属の解析ソフトにてTime Intensity Curve(TIC)を作成した.腫瘤内にROIを設定し,造影開始時の輝度値を0とし,そこから造影された最大の輝度レベルを(1)ピーク値(dB),2分後の輝度レベルを2分値と定義する.ピーク値まで上昇する速度を(2)ピーク速度(dB/sec),ピーク値から2分値まで徐々に輝度値が消退する速度を(3)消退速度(dB/sec)と定義し,疾患毎に検討した.検討項目は(a)各疾患におけるTIC作成の可否 (b)各疾患におけるTIC各因子の比較 とした.疾患毎の比較はMann Whitney U testで行った.
【結果】
(a)TIC作成は135例141回のCEH-EUS中119回で可能であった.通常の超音波検査では腫瘤の描出が難しい中下部胆管癌や膵尾部の小病変もCEH-EUSによる観察およびTIC作成が可能であった.IPMNは,12例中7例でTIC作成が難しく,結節の血流評価には適さないが,粘液塊との鑑別などには有用であった.(b) 1.膵癌n=46 (1)21.1±11.0(2)2.6±1.7(3)0.12±0.12, 2.胆管癌n=23(1)31.0±9.3(2)4.5±2.4(3)0.17±0.07, 3.NET n=14(1)34.1±8.2(2)5.0±3.3(3)0.13±0.08, 4.AIP(PSL投与前) n=10 (1)31.6±11.3(2)3.4±1.9(3)0.19±0.07,AIP(PSL投与後) n=7 (1)32.0±14.3(2)5.8±3.5(3)0.20±0.07であった.膵癌とNETを比較すると(1)p<0.01 (2)p=0.01(3)p=0.98とピーク値,ピーク速度で有意差を認めた.また,膵癌とAIP(PSL投与前)を比較すると(1) p<0.01 (2)p=0.35(3)p=0.04とピーク値と消退速度で有意差を認めた.以上から,CEH-EUSのTIC作成による定量的解析は,膵癌,NET,AIPなどの疾患の鑑別において有用である可能性が示された.しかし,胆管癌を手術施行の有無やv因子に分けて検討したが,CEH-EUSの各因子で差を認めなかった.またAIPのPSLによる治療前後でもCEH-EUSの各因子を検討したが,有意差を認めなかった.
【結語】
CEH-EUSは,高度な空間分解能を有する超音波内視鏡と優れた時間分解能を持つ造影超音波を組み合わせた画像診断であり,経腹的な超音波検査では描出が難しい病変が多い胆膵疾患の時間軸に沿った血流動態描出を可能にした.特に,中下部胆管や膵小病変の血流評価はCEH-EUS以外に出来ず,その有用性が示された.しかし,予後予測やAIPの治療効果判定などへの有用性がいまだ示すことが出来ず,今後症例を重ね検討する必要がある.