Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション9 消化管疾患における超音波検査の現状と今後

(S249)

どうする消化管の超音波診断? 技師の立場から

How do we move on with gastrointestinal ultrasound? ~from sonographer’s point of view~

西田 睦1, 2, 尾羽根 範員3, 野中 利勝4, 戸出 浩之5

Mutsumi NISHIDA1, 2, Norikazu OBANE3, Toshikatsu NONAKA4, Hiroyuki TOIDE5

1北海道大学病院検査・輸血部, 2北海道大学病院超音波センター, 3住友病院診療技術部超音波技術科, 4福岡県済生会大牟田病院生理機能検査室, 5群馬県立心臓血管センター技術部

1Clinical Laboratory and Transfusion, Hokkaido University Hospital, 2Diagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital, 3Department of ultrasonic examination, Sumitomo hospital, 4Physyological laboratory, Fukuoka Saiseikai Omuta Hospital, 5Department of Medical Technology, Gunma Prefectural Cardiovascular Center

キーワード :

【はじめに】
最近,消化管領域における超音波検査の有用性が認識されつつあるが,実際の臨床の場では広く活用されていないのが現状である.そこで今回は日本超音波検査学会に在籍する技師の立場から,消化管疾患に対する超音波検査の現状について検討し,消化管エコーの今後について若干の私見を述べる.
【現状分析】
北海道大学病院(936床)の超音波センターにおける消化管領域の消化器超音波検査施行件数に占める割合は2006年度0/1,303件0.0%,2007年度124/2,041件6.1%,2008年度148/2,238件6.5%,2009年度167/2,542件6.6%,2010年度168/2,984件5.6%.札幌市内の太黒胃腸科病院(60床)では2010年度消化管有所見数は1,949/6,873件28.4%.同病院における休日救急当番病院施行件数29件中,確定診断内訳は,消化管疾患11例78.6%,尿管結石他は3例21.4%であった.一方,日本超音波検査学会の過去6年間の一般演題発表で,消化管領域の割合は2006年18/138題13.0%,2007年15/138題10.9%,2008年9/83題10.8%,2009年10/123題8.1%,2010年17/113題15.0%,2011年8/110題7.3%,機関誌の消化管に関する論文数は4/82 (4.9%)であった.地方会における講演などのテーマの内容に含まれている割合は,順に3/14回21.4%, 3/15回20.0%, 1/17回5.9%, 4/17回23.5%, 3/17回17.6%, 2/11回18.2%であった.また2009年度からの主催講習会15回における消化管領域の講義回数は40/294(13.6%), 消化器領域では17/57(29.8%)であった.
【現状の考察】
北大病院では2007年度に消化管エコーを本格的に開始後,0であった件数は消化器領域の5~6%前後を占め,その後も著変なく推移した.一般的な胃腸科病院では,消化管疾患の有所見率は高く28.4%,さらに救急患者対象となる当番病院では78.6%と増加していた.施設の事情も考慮されるが,大学病院などでは,消化管エコー施行可能な技師が存在した場合ニーズはあるが,多くの患者さんは精査で受診するケースが多いため5~6%にとどまり,一般的な胃腸科病院では有症状で来院する場合が多く,急性腹症が多い当番病院ではその割合は増加したと考えられた.また,日本超音波検査学会の一般演題発表数は10%前後で推移していることから,消化管領域に取り組む技師は存在し,その興味は継続していることが推察される.論文掲載においてはやや低い傾向があるが,一般演題数を考慮すると妥当な割合と考えられる.比較的新しく,興味あるトピックが選択される地方会の内容に消化管領域が包含されていることは,技師のこの領域への関心度が高いことが伺える.講習会では消化管の消化器に占める領域は29.8%と高く,その割合はコンスタントに推移し,受講者の要求は高く,一定していることが伺える.以上のことから臨床において,消化管エコーのニーズはあり,技師は消化管を日常の検査で必要な領域ととらえており,研究対象としても充分な興味もあることが推察される.
【将来展望】
日本超音波検査学会の演題発表や講習会などのデータからは,やる気のある技師は存在し,教育の機会も少なからずあるが,実際には,技術的に習得するのが容易ではないこと,臨床からの検査の依頼が少ないことなどが問題点として推察される.今後,技師は自らのスキルを磨き,技師から臨床側へ消化管エコーの有用性をアプローチしていくことによりさらなる普及が期待され,結果として患者さんの診療に貢献するものと考える.