小来田 幸世¹, 今井 康陽¹, 大濱 日出子¹, 福田 和人¹, 井倉 技¹, 澤井 良之¹, 関 康², 中島 収³, 村上 卓道⁴

Sachiyo KOGITA¹, Yasuharu IMAI¹, Hideko OHAMA¹, Kazuto FUKUDA¹, Takumi IGURA¹, Yoshiyuki SAWAI¹, Yasushi SEKI², Osamu NAKASHIMA³, Takamichi MURAKAMI⁴

¹市立池田病院消化器内科, ²市立池田病院放射線科, ³久留米大学医学部病理学講座, ⁴近畿大学医学部放射線診断学

¹Department of Gastroenterology, Ikeda Municipal Hospital, ²Department of Radiology, Ikeda Municipal Hospital, ³Division of Pathology, Kurume University hospital, ⁴Department of Radiology, Kinki University

キーワード :

【目的】
組織学的に診断したdysplastic nodule（DN）,早期肝細胞癌（eHCCを乏血性wHCCとした）,多血性高分化型肝細胞癌（wHCC）および中低分化型肝細胞癌（m/pHCC）の組織分化度別に,EOB造影MRI （EOB-MRI） 肝細胞相とSonazoid造影US（CEUS）Kupffer相の造影効果を比較し,OATP8発現との関連も検討した．また肝切除術におけるSonazoid造影術中超音波（CE-IOUS）の有用性についても検討した．
【対象と方法】
1）CEUS,EOB-MRI両者を施行し,手術あるいは肝生検にて組織学的に診断したHCC73結節（eHCC33結節を含む高分化42結節,中低分化31結節）及びDN9結節を対象とした．CEUSはGE社製LOGIQ7を用い,Sonazoid静注30分後のKupffer相にて高MI照射によりbubble崩壊後に生じるドプラ信号を検出し,sonazoid enhancement index（腫瘍部のドプラ信号-非腫瘍部のドプラ信号）で評価した．EOB肝細胞相での取り込みは既報のごとくEOB enhancement ratioで評価した．OATP8の免疫染色を行いその発現とEOB-MRI肝細胞相の造影効果,組織分化度との相関について検討した．
2） 2009年10月から2011年7月までに術前画像検査にて肝細胞癌と診断し,術前にCEUSと術中にCE-IOUSを評価した肝切除症例28例35結節を対象とした．術中にGE社製LOGIQ7を用い,Sonazoidを静注し,2分までのvascular phase,10分後のKupffer phaseにて診断した．
【結果】
1）EOB-MRI肝細胞相において低信号を示したのは,DN 33.3％,eHCC 93.9％,wHCC 88.9％,m/pHCC 93.5％であり,多血性HCCにおいて肝細胞相にて高信号を示したのは,wHCC 11.1％,m/pHCC 6.5％であった．EOB enhancement ratioは,DN 0.97±0.69,eHCC 0.81±0.10,wHCC 0.88±0.19,m/pHCC 0.78±0.21と組織分化度が低下するに伴い低値を示した．また,CEUS Kupffer相において低エコーを示したのは,DN 0％,eHCC 9.1％,wHCC 77.8％,m/pHCC 100％であった．sonazoid enhancement indexはDN 0.28±1.40,eHCC -0.35±1.56,wHCC -3.10±2.85,m/pHCC -5.21±1.46であり,中低分化HCCでは低値を示した．
2） 肝切除した35結節の組織診断はwHCC 12結節,mHCC 21結節,pHCC 2結節であり,全例でCE-IOUSによる診断が可能であった．うち5結節は術前のCEUSにて検出困難であったが,CE-IOUSにて検出可能であり,すべてwHCCであり,腫瘍径は14mm 以下であった．CE-IOUSにて新たに検出したのは1例1結節であり,腫瘍径5mmの高分化型肝細胞癌であった．
【結論】
EOB-MRI肝細胞相ではDNの一部で取り込み低下がみられ,eHCCの94％で低信号を示し,中低分化HCCでは高信号を示したものを含めると全ての結節で検出可能であり,EOB肝細胞相での取り込みとOATP8の発現はよく相関し,HCCの分化度が低下するにつれ減少した．一方,Sonazoid kupffer相ではDNの全例,eHCCの多くで低エコーを示さず,中低分化型HCCでは全例低エコーを呈した．また,CE-IOUSは肝腫瘍の質的診断と微小病変の検出に有用であった．