濱本 貴子

Takako HAMAMOTO

後藤学園附属入新井クリニック

Iriarai clinic, Goto college of medical arts and science

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リンパ浮腫の診断において,まずは問診・視触診・血液検査等で全身性疾患に伴う浮腫との鑑別をおこなうが,次いで局所性浮腫としての鑑別診断の際に重要となるのが静脈性浮腫との鑑別である．特にDVTの除外は,浮腫の診断後に用手的リンパドレナージや圧迫療法等の保存的治療を安全に進めるためにも不可欠といえる．当院では,リンパ浮腫診断の際に患肢の体表エコーにおける水分貯留像・皮下脂肪組織構造変化等の評価と併せて,静脈エコーでDVTの有無の確認を全例におこなっている．静脈エコーとしてはまずは仰臥位にて7.5MHzリニア型探触子を用い大腿静脈系を,続いて3.5MHzコンベックス型探触子にて腸骨静脈系を評価する．いずれも患肢・健肢両側（両下肢浮腫の場合には両患肢）ともにBモード法での形態診断（静脈拡張の有無・圧迫法での圧縮性判定）をおこない,次にカラードプラ法（流速レンジ約10cm/sec）・パルスドプラ法での血流診断（血流シグナル確認・呼吸負荷・ミルキング）を施行する．下肢の続発性リンパ浮腫では骨盤内操作を伴う手術が施行されていたり,骨盤部に放射線照射がなされていたりといった既往もあり,癒着等による腸骨静脈領域での静脈還流障害が存在していることもときに見受けられる．特に,術後早期では骨盤内リンパ嚢胞による腸骨静脈圧排を生じていることもあるため,大腿静脈系に明らかな血栓を疑う所見がなかった場合にも腸骨静脈系のエコー評価を必ずおこなうこととしている．逆に末梢側に関しては,血管エコーを実施する前に体表エコーでの浮腫組織の評価をおこなった際に下腿筋肉内の水分貯留像や静脈拡張等の静脈うっ滞性浮腫の存在を疑った場合にのみ,膝窩静脈〜下腿静脈系の評価を追加している．当院では下肢静脈エコーだけではなくリンパ浮腫の重症度評価のために比較的詳細な体表エコー実施しているため,通常DVT検査の際に実施するとおりに静脈エコーを施行すると検査時間が非常に長くなり患者の負担も増大する．そのため,できるだけ効率よく検査をおこなえるよう,まずは観察部位を絞っての評価とし,静脈疾患の疑わしき症例のみ下肢全体にわたる観察を追加することとしている．症例）39歳女性・子宮頚癌術後続発性右下肢リンパ浮腫にて婦人科より紹介．エコーにて右外腸骨静脈〜下腿静脈DVT指摘．