宮崎 知奈美

Chinami MIYAZAKI

東住吉森本病院循環器内科

Department of Cardiology, Higashisumiyoshi Morimoto Hospital

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　臨床検査技師の資格を取った直後に,プローべを握って超音波のルーチン検査をこなせる人はまずいないだろう．日本では超音波検査室に配属された時点から技師としての実践と勉強が同時にスタートする．教えてくれる人がいたとしても,忙しい現場ではなかなか聞くこともできずに「見て盗め」「わからなかったら聞け」．時には見落としていないかびくびくしながら,独学に近い形で努力を重ね,超音波検査ができるようになった人も多いと思う．
アメリカではどうなのだろうか？演者はMayo Clinicに研究留学中,整備された心エコー技師養成制度に触れる機会があった．アメリカにおける技師養成制度の一例として紹介する．
　アメリカの超音波検査技師の資格は検体検査やその他の生理機能検査の資格とは全く独立している．また超音波検査の中でもRDMS（腹部,乳房,婦人科）,RDCS（心臓）,RVT（血管）と資格が別々に存在する．心エコー検査技師として正式に働くには原則としてRDCS（Registered Diagnostic Cardiac Sonographer）という資格が必要で,RDCSを受験するにはcommunity colledge（短大）や専門学校で約2年間のコースを修了している必要がある．
　Mayo ClinicのEchocardiography Programという心エコー技師養成専門コースに入学すれば,フルタイムの講義と実習を21ヶ月間かけて受け,RDCSの受験に必要な知識を得ることができる．看護師など他の医療職を経験してから入学する人もいるが,高卒や文系大学出身者などの医療知識がない人たちも一から学ぶことができる．一学年の定員は10-15人程度と少数精鋭制である．コースでは医師や技師が講師となり,心臓の病態生理,疾患各論,解剖,超音波の基礎理論などの基礎の講義を行う．そして正常人を用いたスキャンの練習で十分な基礎トレーニングを積んだ後に検査の現場に投入される．実際の患者のスキャンでは,さまざまな症例を上級ソノグラファーとペアを組んで撮りながら技術を習得していく．21ヶ月のコースを無事卒業した後にRDCSの資格試験を受け,合格したら晴れてソノグラファーとして一人立ちできる．
　素人であった学生たちが毎年,技術を身につけて卒業していくのを見て,Mayoの制度は誰でも間違いなく,一定の技量を持ったソノグラファーになれるシステムであると感じた．教える側は時間と労力を要するが,Mayo Clinicでは医療の質の維持と向上のために教育がとても重要視されていたのが印象的であった．日本の技師養成制度を考える上で一つの参考になれば幸いである．