Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 循環器
パネルディスカッション3 成人先天性心疾患への心エコーによるアプローチ

(S197)

成人先天性心疾患へのアプローチ(技師の立場から)

Approach to an adult congenital heart disease by Sonographer

高橋 秀一

Shuichi TAKAHASHI

天理よろづ相談所病院臨床病理部

Department of Clinical Pathology, Tenri Hospital

キーワード :

【はじめに】
検査を担当する技師は,正常,虚血性心疾患,弁膜症,心筋症,先天性・・・・などと,色々な頭脳箪笥の情報を出し入れしながら検査結果をまとめるが,先天性となった場合には,虚血や弁膜症のように詳細な検査を返すことができているであろうか? 今回は,このような現況をふまえて,エコー画像を最前線で見ている技師の立場から成人先天性心疾患に関する心エコー検査について是非必要と思われる事項を概説する.
【普通に検査を進めること】
「スクリーニング検査」との依頼で検査をする状況と同様に,内腔の大きさ,壁厚,大動脈・肺動脈の径を計測(確認)する.そして,大動脈弁は,僧帽弁は,三尖弁は,肺動脈弁は・・・ごく普通に検査を進める.ドプラ検査も,通常のルーチン検査を進める.目の前に見える大きな異常(奇形)については,すぐに注目するのではなく,これら普通に検査をした結果を統合して「次のステップ」すなわち先天性心疾患の存在を想定して,詳細に進めることを推奨する.
【次のステップ】
■内腔が大きい右室拡大を呈する先天性は,心房中隔欠損症,心内膜床欠損症,肺静脈還流異常,三尖弁逆流症,肺動脈弁逆流症,左室右房交通症,動静脈瘻が主な疾患群である.右室拡大に見合った心房中隔欠損孔が見つからない場合には,剣状突起下や右肋間からのアプローチを駆使するか,経食道心エコー検査による精査も考えなければならない.左室腔が拡大する病態はとても多い.心室中隔欠損症,動脈管開存症,冠動脈瘻,大動脈弁閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全症が主な疾患群である.右房が大きく,右室の拡大が無い場合には三尖弁の付着部位に注目する.Ebstein奇形では三尖弁中隔尖と後尖が房室輪の下方(心尖部側)に偏位し,三尖弁偏位の程度は様々である.「三尖弁逆流が,なんとなく心尖部よりから発生している?」という印象が発見の契機となることもある. 左房が大きく,左室の拡大が無い場合には僧帽弁狭窄症を一番に考える.前尖・後尖の腱索が左室内の単一乳頭筋に収束するパラシュート僧帽弁にも注意する.■心室壁厚の異常 収縮期圧が上昇してそのストレスが増すと心筋は肥厚する.右心系の圧負荷疾患は,肺動脈狭窄(漏斗部,弁,弁上,枝),左心系の圧負荷疾患は,大動脈狭窄(弁,弁上,弁下),大動脈縮窄が主な疾患群である.■大きな心室中隔欠損と大動脈騎乗 大きな心室中隔欠損があり,大動脈が心室中隔に騎乗している場合にはファロー四徴症を考えチアノーゼ性心疾患では最も頻度が高い.しかしながらその他に両大血管右室起始症,両大血管左室起始症,総動脈幹症でも大きな心室中隔欠損と大動脈騎乗が存在している.この両者の存在だけで安易にファロー四徴症と考えるのは,勇み足のこともある.
【複雑心奇形への対応】
左室長軸断面像の描出が基本とされているが,修正大血管転位ではこれがどうもうまく描出できないのが特徴といえる.大血管が並行に走行すること,大動脈弁直下に漏斗部を有することがその理由と考える.これらの心奇形に対するアプローチには,区分診断法が有用で,順序立てて奇形を検証し理解することが近道となる.
【まとめ】
先天性心疾患に対する苦手意識を克服する魔法は残念ながら無いが,秘策はある.先天性心疾患の心エコー検査は,「先天奇形を発見することが第一である」かもしれないが,その観念から脱却し,『正常心臓と,どこが違う』という形態的な異常を認識し,血流情報とあわせて血行動態を考えると興味が湧いてくる.とにかく,肩の力を抜いて自然体.これに尽きる.