Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 循環器
パネルディスカッション2 循環器疾患における携帯型超音波

(S192)

在宅医療における循環器疾患と呼吸器疾患の,携帯型超音波による鑑別診断

Differencial diagnose of dyspnea using hand carried ultrasound device

泰川 恵吾

Keigo YASUKAWA

医療法人 鳥伝白川会 ドクターゴン診療所在宅医療

home care, Dr.GON crinic

キーワード :

【目的】
当医療法人は,沖縄の離島宮古群島と神奈川の鎌倉市を中心とした高齢化地域で3施設を運営し,在宅医療に重点を置いた診療を行っている.受け持ち患者数は年々増加し,平成23年12月の時点で,3施設合計で425名の通院困難な患者の訪問診療を行っており,重症患者数や在宅看取り数も増えている.それに伴い,急性増悪によって予定外の往診を必要とする頻度も多くなっているが,症状として最も多い呼吸器症状については,呼吸器と循環器のどちらに原因があるのかを鑑別することが困難なことが多い.超音波検査は,その鑑別に特に有用である.最近導入された超小型携帯型超音波診断装置を使用した鑑別診断の有用性を検討するため,導入前後の在宅診療における超音波検査の試行回数について比較検討する.
【対象と方法】
平成20年から平成23年の3年間に3施設で訪問診療または往診を行った患者1170名を対象として,呼吸器症状などの胸部症状で往診,または訪問診療時に超音波検査を施行した回数の年次推移を比較した.
【結果と考察】
超音波検査の施行回数は,平成21年に67回,平成22年に87回であったが,平成23年には201回と急増していた.同3年間の往診と訪問診療回数は平成21年8421回,平成22年9743回,平成23年11580回であった.3年間で診療回数は約1.38倍になったが,超音波検査回数は2倍以上増加したことになる.当院では,平成9年から携帯可能な超音波装置を使用していたが,デスクトップパソコンまたはノートパソコン程度の大きさで,手軽に携帯することは困難であった.平成23年にGE社のVSCANを導入して以来,常時携帯して診療することが可能になった.試行回数が急増したのは,携帯が手軽であるが故に,医師がその有用性を認識したためと考えられる.在宅医療の現場では,病院で行う検査の多くが施行できないため,理学所見のみから正反対の水分バランスや薬剤投与の判断を迫られる事がしばしばある.そのような場合に,携帯型超音波検査装置を用いて,壁運動,肺内水分量,下大静脈などを観察し,NT-proBNPやトロポニンT等の在宅で可能な検査を組み合わせることで,診断の精度を高めることができる.超音波検査のチェックポイントを簡便にすることで,総合診療を求められるために専門性が必ずしも高くない在宅医でも心不全の有無をかなり正確に診断することが可能になる.症状が軽い段階で的確な検査を施行できれば,重症化を避け,それ以上の不要な検査,治療,および入院を避けることができる可能性が大きい.在宅医療の現場における,携帯型超音波装置を用いた循環器症状と呼吸器症状の鑑別診断の実際について,症例を提示して報告する.