伊藤 隆英, 野木 信平, 嶋本 新作, 宗宮 浩一, 石坂 信和

Takahide ITO, Shinpei NOGI, Shinsaku SHIMAMOTO, Koichi SOHMIYA, Nobukazu ISHIZAKA

大阪医科大学循環器内科

Department of Cardiology, Osaka Medical College

キーワード :

【目的】
Postsystolic Shortening（PSS）は,駆出時相を超えても心筋の収縮が持続する現象であり,心筋虚血や心筋バイアビリティを反映するものとされている．PSSは非虚血心においても認められるが,かかる病態におけるPSSの臨床的意義は明らかでない．本研究では,スペックルトラッキング法に基づくAutomated Function Imaging（AFI）を用いて拡張型心筋症（DCM）患者におけるPSSを評価し,β遮断薬投与前のPSSと治療効果-特に左室のリバースリモデリング-との関連について検討した．
【方法】
DCM患者26名（59±13歳）を対象とした．β遮断薬（カルベジロール）投与前に心臓超音波検査（GE Vivid 7）を施行し,左室容量や駆出率などの標準的パラメターおよび左室におけるPSSの出現範囲を測定した．AFIでは,左室17分画におけるPostsystolic Index（PSI）がブルズアイ表示される（図）．PSIとはピークストレイン値に対する大動脈弁閉鎖時点からピークまでのストレイン値の割合である．本研究では,あらかじめ取得した健常者のデータに基づき,PSI≥10％と計測された分画を異常PSS分画とした．PSSの出現範囲は,17分画における異常PSS分画をカウントすることにより求めた．
【結果】
平均2ヶ月のカルベジロール投与（平均投与量9.8 mg/日）により,左室駆出率は26±8％から31±8％（p ＜0.01）,左室収縮末期容量は146±45 mlから116±39 ml（p ＜0.01）と改善,同時に異常PSS分画も10.8±3.2から8.6±3.1（p ＜0.01）と減少した．特に,左室側壁と左室後壁における異常PSSの減少度が目立っていた．投与前における異常PSS分画数は,左室駆出率の変化量（r = 0.63, p ＜0.01）ならびに左室収縮末期容量の変化量（r = -0.55, p ＜0.01）と有意な相関を示した．
【結論】
DCM患者のPSSを評価することにより,β遮断薬治療にともなう左室のリバースリモデリングが予測できる可能性がある．