Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 基礎
シンポジウム5 バブルを使った診断と治療

(S172)

分子標的性バブルリポソームによる動脈硬化不安定プラークの超音波イメージング

Echo Imaging of Atherosclerotic Vulnerable Plaque Using the Targeting Bubble Liposome

萩沢 康介1, 西岡 利彦2, 真崎 暢之3, 鈴木 亮4, 丸山 一雄4

Kohsuke HAGISAWA1, Toshihiko NISHIOKA2, Nobuyuki MASAKI3, Ryo SUZUKI4, Kazuo MARUYAMA4

1防衛医科大学校生理学講座, 2埼玉医科大学総合医療センター心臓内科, 3防衛医科大学校循環器内科, 4帝京大学薬学部生物薬剤学

1Department of Physiology, National Defense Medical College, 2Division of Cardiology, Saitama Medical University, Saitama Medical Center, 3Division of Cardiology, National Defense Medical College, 4Department of Biopharmaceutics, School of Pharmaceutical Sciences, Teikyo University

キーワード :

【目的】
我々は活性化血小板のαIIbβ3に結合するペプチドをリポソーム表面に組み込み,血管内血栓に高密度に集積する分子標的性バブルリポソームを開発している.(Int J Cardiol. 2011:202-6)これにより,通常の体表面超音波診断装置を用いて血栓イメージングが可能となる.この技術を動脈硬化巣に応用することによって,不安定プラークの非侵襲的超音波イメージング法を開発するのが目的である.不安定プラークを取り囲むように増生する新生血管で強く発現するαIIbβ3及びαVβ3インテグリンの両者を標識するリガンドにより,動脈硬化病変の超音波による質的・定量的診断を可能にする.
【方法】
動脈硬化プラーク内の新生血管に到達し,細網内皮系での捕捉を回避(ステルス化)できるように120nmにリポソーム粒子径を均一化した.リポソームの構成脂質はDSPC,Cholesterol,DSPE-PEG-Malからなり,最終脂質濃度を5.7 mg/mlとした.リポソーム表面のポリエチレングリコール鎖末端に,動脈硬化病変に対するリガンドとしてArg-Gly-Asp (RGD) 配列ペプチドを組み込み,リポソーム内にパーフルオロカーボンガスを封入して超音波造影バブルにした.動脈硬化病変を既に形成しているApoEノックアウトマウスの尾静脈よりバブルリポソームを0.05ml投与し,胸部大動脈ないし総頸動脈の動脈硬化プラークが,40MHzの小動物用超音波診断装置(Vevo770)を使って可視化(造影)できるか検討した.
【結果】
胸部大動脈(図の点線内)の壁不整部位つまり動脈硬化病変(白矢印)は,バブルリポソーム投与で超音波輝度が増強した.さらに,その対側血管壁では,バブルリポソーム投与により動揺性の不安定プラーク(黄矢印)が確認できるようになった.
【結語】
動脈硬化不安定プラークを標識・造影する分子標的性バブルリポソームを開発した.これにより経時的な動脈硬化病変の質的診断を簡易に行なうことができ,動脈硬化管理の有用な方法となることが示唆された.