祖父尼 淳, 森安 史典, 佐野 隆友, 糸井 隆夫

Atsushi SOFUNI, Fuminori MORIYASU, Takatomo SANO, Takao ITOI

東京医科大学消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【背景】
切除不能膵癌の治療法として化学療法や放射線化学療法が原則的におこなわれているが,1生率は約10％と低い．他領域では内視鏡や経皮的治療などの低侵襲治療の適応が拡大しているが,膵癌に対しては低侵襲治療の手段は少ない．その中でも放射線被曝がなく,針なども必要としない低侵襲の治療法として注目されているのが,強力集束超音波 （High Intensity Focused Ultrasound; HIFU） 療法である．HIFU療法は,多数の超音波発信源から腫瘍の目的部位の1点に集束させ,体外から組織の焼灼を行う治療法である．
【目的】
切除不能進行膵癌患者に対しHIFU治療をおこない,その安全性を検証し,治療法を確立すること．
【方法】
非無作為抽出,非連続登録前向き単施設研究で有効解析対象症例数は30例．重篤な有害事象の予測値を10％とし,30％以上であれば研究中止とし設定した（α=0.05,β=0.20）．HIFU 装置はFEP-BY02（China Medical Technologies Co.LTD., China）．2008年12月より切除不能膵癌に対し十分なICが得られ,全身化学療法に加えた局所療法としてHIFU治療をおこなった．術中・術後における有害事象の有無を確認し安全性を評価した．本試験は当院倫理委員会の承認を受け,東京医大がん研究事業団の研究助成を得ている．
【結果】
平均腫瘍径32.2 （15-40） mm,平均治療回数2.7 （1-4） 回,平均治療時間2.6 （1-4.5）時間．平均伝達力500-1000W,平均焼灼回数500-2000発,伝達時間150-1000ms,間歇時間150-3000msであった．有害事象は膵仮性嚢胞2例,遅発性膵炎1例で13％の頻度であった．腫瘍完全焼灼率は73％,疼痛緩和効果は64％であった．
【結語】
切除不能進行膵癌に対しFEP-BY02を用い安全にHIFU治療をおこなうことが可能であり,今後,予後不良な切除不能膵癌に対する低侵襲治療のひとつとなりうる可能性が示唆された．