Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム6 組織弾性評価の手法と用語の標準化に向けて

(S142)

肝領域における組織弾性評価法:「硬さ」と「粗さ」の違い

Liver Fibrosis Imaging Methods: Difference between “Stiffness” and “Rough”

矢田 典久, 工藤 正俊

Norihisa YADA, Masatoshi KUDO

近畿大学医学部消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Kinki University Faculty of Medicine

キーワード :

びまん性肝疾患領域では,病態の進行により線維化が増し,肝細胞癌の発生率や門脈圧亢進症の発症率が増えることが知られており,肝線維化の診断が非常に重要である.近年,組織弾性映像法が開発され非侵襲的な肝線維化診断に応用されつつあるが,十分な理解が得られていない.
組織弾性映像法には様々なものが存在するが,剪断波伝達速度から硬さを測定する手法と,変形の程度を可視化させ組織の相対的な硬さを表示する方法とに二分される.前者にはFibroScanやVirtual Touch Tissue Quantificationなどが含まれ,肝硬度(3ρV2[kPa](ρ:密度,V:速度))あるいは剪断波伝播速度[m/s]が数値として得られるから肝線維化診断に広く用いられるようになってきた.しかし,剪断波伝達速度は炎症・黄疸・鬱血などの影響により速くなり実際の肝線維化度とかけ離れた値を示すことがあることに注意が必要である.一方後者は,Real-time Tissue Elastographyなどいわゆる狭義のエラストグラフィであるが,乳腺や甲状腺で広く用いられている様に用手的な加圧により得られる相対的な変位を画像化し,相対的な硬さのイメージを得ることができる.我々の研究では,びまん性肝疾患を心拍による振動を用いて観察すると,肝線維化の進行に応じて相対的に硬い部分である青く表示される領域が増加し,その模様もより複雑化することが分かっている[1-4].結果的に肝線維化を組織の歪みの差(画像の粗さとして直感できる)として間接的に捉えることができる.
これら組織弾性映像法は,共にエラストグラフィという言葉でまとめられることがあるが,一方では「硬さ」,他方では「粗さ」が得られる.びまん性肝疾患領域に於いては「肝線維化」=「粗さ」ではあるが,剪断波伝達速度は炎症・黄疸・鬱血などの影響により速くなり「肝線維化」=「硬さ」にはならないこともあることに注意が必要である.
【参考文献】
1.Fujimoto K, Wada S, Oshita M, Kato M, Tonomura A, Mitake T. Noninvasive evaluation of hepatic fibrosis in patients with chronic hepatitis C using elastography. Medix Suppl 2007; 24-27.
2.Tatsumi C, Kudo M, Ueshima K, Kitai S, Takahashi S, Inoue T, Minami Y, Chung H, Maekawa K, Fujimoto K, Akiko T, Takeshi M. Noninvasive evaluation of hepatic fibrosis using serum fibrotic markers, transient Elastography (FibroScan) and real-time tissue elastography. Intervirology 2008;51 Suppl 1:27-33.
3.Tatsumi C, Kudo M, Ueshima K, Kitai S, Ishikawa E, Yada N, Hagiwara S, Inoue T, Minami Y, Chung H, Maekawa K, Fujimoto K, Kato M, Tonomura A, Mitake T, Shiina T. Non-invasive evaluation of hepatic fibrosis for type C chronic hepatitis. Intervirology 2010;53(1):76-81.
4.藤本 研治 加藤 道夫,外村 明子,矢田 典久,辰巳 千栄,尾下 正秀,和田 滋夫,上嶋 一臣,石田 哲士,古田 朋子,山崎 大,辻本 正彦,元木 満,三竹 毅,金 栄浩,山本 佳司,椎名 毅,工藤 正俊,林 紀夫.Real-time Tissue Elastography を用いた肝線維化の非侵襲的評価法〜Liver Fibrosis Index (LF Index) による stage 判定.肝臓 2010;51(9), 539-541.