Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
頭部:頭頸部

(S543)

脳梗塞患者における上腕動脈と総頸動脈径の関係

Relationship between brachial artery and common carotid artery diameter in cerebral infarction

山本 真也1, 竹川 英宏1, 平田 幸一2, 髙田 悦雄3

Masanari YAMAMOTO1, Hidehiro TAKEKAWA1, Kouiti HIRATA2, Etsuo TAKADA3

1獨協医科大学神経内科脳卒中部門, 2獨協医科大学神経内科, 3獨協医科大学超音波センター

1Stroke Division, Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 2Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 3Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
頸動脈における内中膜複合体厚の肥厚は冠動脈疾患や脳卒中との関連が知られている.また,近年では冠動脈病変と上腕動脈の血管径(brachial artery diameter:BAD)およびflow-mediated dilatation(FMD)の検討がなされ,BADはFMDよりも無症候性冠動脈病変との関連が強いことが示唆されている.一方,総頸動脈の血管径(common carotid artery diameter:CAD)の拡張は大動脈瘤との関連が示されており,動脈硬化との関係が示唆されている.しかし,脳梗塞におけるCADとBADの相関については検討が少なく,これら血管径の測定が脳梗塞の危険因子になるかは不明である.そこで,脳梗塞患者と血管障害の既往がない症例でCADとBADの関係について検討を行った.
【対象と方法】
アテローム血栓性脳梗塞患者連続15例(ATBI群)および脳卒中や心筋梗塞,末梢動脈閉塞症がない正常対象者(NC群)15例で検討を行った.脳梗塞の診断は,TOAST分類を用い,脳卒中専門医が診断した.超音波検査はSSA-770A(TOSHIBA製)の中心周波数7.5MHzリニア型探触子を使用し,血管径の計測は拡張末期に施行した.CADは頸動脈洞から約2cm体幹側,BADは肘部で計測を行い,左右でより拡張している血管を用いた.統計はMann-Whitneyを使用し,両群における年齢,CAD,BADの差異について検討を行った.なお本研究は,当施設の研究倫理指針に基づき施行した.
【結果と考察】
年齢(中央値)はNC群66歳に対し,ATBI群は71歳と高齢であったが,統計学的に有意差はなかった(P=0.39).BAD(中央値)はNC群5.4mmであり,ATBI群の5.3mmと差は認めなかった(P=0.72).一方,CAD(中央値)はNC群7.8mmに対し,ATBI群は8.5mmと有意に拡張していた(P<0.05).BADの拡張は無症候性冠動脈病変を示唆するパラメーターであることが報告されている.また,頸動脈における動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中といったアテローム血栓症を予測する因子であることが知られているほか,総頸動脈の拡張は大動脈瘤を示唆する所見であることも報告されている.超音波検査で簡便に血管径の計測が可能な部位における動脈硬化性変化の危険を予測することは,健康診断などで有用性が高いと考えられる.本検討では血管径の拡張がアテローム血栓性脳梗塞の危険因子として有効か検証を行った.その結果,BADでは有意差が得られず,CADの拡張がアテローム血栓性脳梗塞を予測し得る因子である可能性が示唆された.頸動脈における内中膜複合体厚や頸動脈狭窄との関連は施行しておらず,今後検討が必要であるが,CADの拡張を認める症例では,血管障害の危険因子管理が重要であると推察される.
【結語】
アテローム血栓性脳梗塞の予測因子として,BADよりもCADの拡張が有効である.