Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
体表・表在:症例報告

(S538)

筋サルコイドーシスの一症例

Muscular sarcoidosis of lower extremity ; report of a case

水島 靖子1, 田中 正俊2, 倉岡 圭2, 下瀬 茂男2, 大野 美紀2, 加藤 真里1, 笠 弘佳1, 東谷 孝徳3, 新野 大介4, 山口 倫1

Yasuko MIZUSHIMA1, Masatoshi TANAKA2, Kei KURAOKA2, Shigeo SHIMOSE2, Miki OHNO2, Mari KATOU1, Hiroyoshi RYU1, Takanori HIGASHITANI3, Daisuke NIINO4, Rin YAMAGUCHI1

1久留米大学医療センター臨床検査室, 2久留米大学医療センター消化器内科, 3久留米大学病院臨床検査部, 4久留米大学医学部医学科病理学講座

1Clinical Laboratory, Kurume University Medical Center, 2Department of Gastroenterology, Kurume University Medical Center, 3Clinical Laboratory, Kurume University Hospital, 4Department of Pathology, Kurume University

キーワード :

【はじめに】
サルコイドーシスは,全身の臓器に非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫形成を特徴とする原因不明の炎症性疾患である.無症状で経過するものから多彩な症状を呈するものまで,その臨床像は様々である.今回,両下肢の筋腫脹と皮膚の発赤,自発痛を伴った筋サルコイドーシスを経験したので報告する.
【症例】
64歳女性.2010年7月より下肢の浮腫を自覚,7月末より下肢腫大が出現し皮膚発赤も広範囲にみられ,筋肉痛も次第に増強したため当院を受診した.既往歴に,2008年にぶどう膜炎を発症している.血液検査ではCRP 0.78mg/dl,IL-2R 1330U/lと高値を認め,他の生化学検査や腫瘍マーカーは正常範囲であった.下肢超音波検査で,両下肢の筋層内(ヒラメ筋・腓腹筋)に多発した形状不整な低エコー病変と,右鼠径部にリンパ節腫大を認め,多発した膿瘍を疑った.筋断裂などの損傷を疑う所見や,深部静脈血栓は認めなかった.CTでは両下肢に多発した高吸収領域と,鼠径部・縦隔内に多数のリンパ節腫大を認めた.悪性リンパ腫などの血液疾患が疑われ,鼠径部リンパ節生検を施行したが,反応性による腫大であった.その後のPET検査で,両側肺門部・肝門部・鼠径部・両下肢に異常集積を認め,サルコイドーシスが疑われ,確定診断をつけるために下肢の皮膚生検を施行した.病理組織は,真皮深層から皮下組織にかけて小型の肉芽腫が多数形成,多核巨細胞もみられ,サルコイドーシスとの確定診断となった.
【考察】
骨格筋は,サルコイドーシスによる類上皮細胞肉芽腫の好発部位であり,そのほとんどは無症候性である.今回の症例は,両側肺門部リンパ節腫大や既往歴,病理所見,急性発症したことより,急性筋炎型のサルコイドーシスと考えられた.発熱や痛みを伴う筋炎型のサルコイドーシスまれであるが,原因不明の筋症状や,超音波検査で筋組織内に多発する低エコー病変を認める症例では,膿瘍,悪性リンパ腫および,サルコイドーシスも念頭におく必要がある.