Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
体表・表在:症例報告

(S537)

超音波診断が有用であったIgG4関連ミクリッツ病の1例

Findings of useful ultrasonographic diagnosis in a patient with IgG4 related Mikulicz disease

山田 利津子1, 2, 5, 辻本 文雄3, 宮内 元樹4, 桜井 正児4, 信岡 祐彦3, 原 正壽2, 庄田 昌隆5, 水木 信久1

Ritsuko YAMADA1, 2, 5, Fumio TSUJIMOTO3, Motoki MIYA-UCHI4, Masaru SAKURAI4, Sachihiko NOBUOKA3, Masatoshi HARA2, Masataka SHODA5, Nobuhisa MIZUKI1

1横浜市立大学大学院視覚器病態学講座, 2聖マリアンナ医科大学健康診断センター, 3聖マリアンナ医科大学臨床検査医学講座, 4聖マリアンナ医科大学超音波センター, 5船員保険健康管理センター健康管理科

1Department of Ophthalmology and Visual Science, Postgraduate School, Yokohama City University School of Medicine, 2Medical Check-up Center, St. Marianna University School of Medicine, 3Department of Laboratory Medicine, St. Marianna University School of Medicine, 4Ultrasound Center, St. Marianna University School of Medicine, 5Department of Healthcare, Seamen’s Insurance AMHTS Clinic

キーワード :

【目的】
涙腺腫瘍は頻度順としては血管腫,偽腫瘍,皮様嚢腫,悪性リンパ腫,涙腺多形腺腫の順に多く,一方,唾液腺疾患は腫瘍性の疾患以外に炎症性疾患,変性疾患など多彩であるにもかかわらず,症状としては単なる腫瘤のみのことが少なくないので,鑑別は必ずしも容易ではない.唾液腺腫瘍の約85%は耳下腺に生じ,顎下腺は約半数,舌下腺はほとんどすべてが悪性である.今回は涙腺ならびに唾液腺腫瘍の1症例を経験し,Bモード超音波検査にドプラ法観察を追加し,エラストグラフィ腫瘍硬度の観察,超音波ガイド下の針生検を実施したので報告する.
【症例】
29歳女性.眼瞼・顎下部腫脹を訴えて来院した.涙腺と顎下腺の腫瘤が触知された.両眼瞼の腫脹涙腺部の腫瘤が観察された.家族歴では父が慢性関節リウマチと糖尿病であった.両眼に複視や視力低下を伴わない無痛性の腫瘤で,弾性硬,周囲と癒着なく,所属リンパ節の腫脹はなかった.
【方法】
超音波診断装置は東芝製SSA-700,日立製EUB-8500,探触子中心周波数6-14MHzを用いた.生命倫理委員会の承認,インフォームドコンセントに基づき実施した.
【結果】
頭部CT所見は両側涙腺の腫脹.濃度は均一で自己免疫疾患が考えられた.外眼筋の腫脹はみられないが,両側三叉神経第2枝の腫脹眼窩下管の拡大がみられた.涙腺超音波Bモード像は両側眼窩眼球外側に分葉状の低エコー腫瘤が観察され,涙腺腫瘤はカラードプラで血流信号が豊富に検出された.涙腺エラストグラフィでは腫瘤は歪み易く,柔らかいことがわかった.右顎下腺針生検ではH-E染色で大型のリンパ濾胞形成を伴う著明なリンパ球浸潤と腺房の萎縮がみられ,慢性唾液腺炎の像を呈した.
【考按】
涙腺腫瘍は発生頻度が0.01-1.47%と稀な疾患であるが,悪性腫瘍が半数であることが知られている.手術摘出では,術後の眼球運動障害や視力障害が生じ,美容的変貌も考慮すると,その適応には慎重を要する.本症例は唾液腺と涙腺の両側性腫脹があり,シェーグレン症候群で観察される特異抗体は陰性であり,サルコイドーシスの臨床検査所見もみられていない.血中IgGが高値であり,IgGサブクラスIgG4は 556 mg/dlと高値であった.このことからIgG4関連ミクリッツ病として保存療法を行い軽快した.
【結論】
涙腺腫瘍の診断に超音波Bモード検査・ドプラ法・エラストグラフィ腫瘍硬度の観察・超音波ガイド下の針生検が有用であった.