Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
体表・表在:その他

(S536)

高周波超音波プローブによる術後浮腫診断

High frequency ultrasound imaging for asssessing postoperative edema

杉本 博行, 菱田 光洋, 中尾 昭公

Hiroyuki SUGIMOTO, Mitsuhiro HISHIDA, Akimasa NAKAO

名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学

Department of Gastroenterological Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
浮腫はさまざまな疾患において認められるが,消化器外科領域でも術後急性期,低栄養状態,癌末期患者などにおいてしばしば遭遇する.浮腫の診断はこれまで視触診で行ってきたが,近年の超音波診断装置の発達,特に表在領域に用いられる高周波プローブの進歩により詳細な超音波診断が可能な領域となった.しかし,これまで高周波プローブを用いた浮腫診断の報告は少ない.今回,消化器外科領域で認められる浮腫の診断に対し高周波プローブを用いた超音波検査を行い若干の知見が得られたので報告する.
【方法】
2010年3月から2011年1月までに当科に入院した消化器外科術後患者のうち表在プローブで腹部皮下組織の状態を検索しえた30人を対象とした.超音波診断装置はLOGIQ E9,プローブはML9-15(一部9L)を使用した.
【結果】
対象患者は消化器外科術後急性期患者25人,癌末期患者3人,低栄養状態患者2人であった.超音波検査では63%19人に皮下脂肪組織内もしくは筋組織間に浮腫を認めた.皮下脂肪組織内浮腫の超音波所見として,脂肪組織を島状に取り囲む無エコー領域として描出され,浮腫が高度になるほど領域は拡大し,背側に向かうほど増強していた.筋組織間浮腫は筋繊維に平行な線上の無エコー領域として描出された.この所見は術後急性期患者に多く認め,開腹創周囲に特に多く認めた.術後縫合不全による限局性腹膜炎症例を1例経験したが,健側に比べ腹膜炎側に筋組織間浮腫を強く認めた.急性期患者では全身状態の回復ともに浮腫所見は消退した.
【考察】
消化器外科術後患者において全身の浮腫はしばしば認められる所見であるがこれまではベッドサイドでの理学所見による診断が主であった.超音波検査はベッドサイドで繰り返し施行可能であり,画像評価ができるため情報の共有も可能であり,外科手術後浮腫の経時的観察に適しているものと考えられた.近年ではポータブルエコーの発達も目覚ましく今後応用可能と思われる.またCT検査では浮腫は皮下脂肪組織のCT値の上昇として認められるが超音波検査では水分貯留部位やその量も測定できる可能性があり今後更なる検討が必要と思われた.
【結語】
消化器外科術後患者における浮腫の診断に超音波検査は有用である.