Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
体表・表在:組織弾性

(S533)

乳腺腫瘍におけるVirtual Touch Tissue Quantificationの使用経験とその有用性

The experience and the evaluation of Virtual Touch Tissue Quantification in breast tumors

後藤 隆純1, 位籐 俊一1, 斎藤 雅博2, 水野 均1, 飯干 泰彦1, 山村 憲幸1, 藤井 仁1, 人羅 俊貴1, 伊豆蔵 正明1

Takasumi GOTOH1, Toshikazu ITO1, Masahiro SAITO2, Hitoshi MIZUNO1, Yasuhiko IIBOSHI1, Noriyuki YAMAMURA1, Hitoshi FUJII1, Toshiki HITORA1, Masaaki IZUKURA1

1りんくう総合医療センター市立泉佐野病院外科, 2持田シーメンスメディカルシステム株式会社マーケティング部

1Department of surgery, Rinku General Medical Center, 2Department of marketing, Mochida Siemens Medical Systems Co., Ltd

キーワード :

【背景】
触診で得られる硬さの情報を,超音波を用いて客観的に画像表現する組織弾性イメージング(Elasticity Imaging)が臨床に応用されている.同法は硬さの定量的評価ができないことが問題である.近年開発されたVirtual Touch Tissue Quantification (VTTQ)は,収束超音波パルスを体外から照射して深部に剪断弾性波を発生させ,その伝搬速度(Vs [m/s] )を計測することにより,組織の硬度を簡便かつ定量的に評価できる手法である.従来は慢性肝炎などの腹部疾患への応用が主であったが,近年,高周波リニア探触子においても適応可能となり,乳腺腫瘍の評価への応用が可能になった.
【目的】
VTTQを用いて乳房組織の剪断弾性波伝搬速度を測定し,乳腺腫瘍の質的診断における有用性を検討する.
【方法】
2009年8月〜2010年12月に乳腺腫瘍の精査目的に当院を受診された患者のうち同意が得られた32名について,腫瘍部・非腫瘍部に対しVTTQを用いた定量的評価を施行した.使用機材はシーメンス社製超音波診断装置S2000,リニア電子スキャン探触子9L4を用いて乳腺腫瘍のVs値を測定した.同一箇所で5回繰り返し測定してVsの平均値を求め,腫瘍部と非腫瘍部,腫瘍の病理組織学的所見によるVs値を比較検討した.
【結果】
VTTQを用いた定量的評価を施行した32症例のうち,13症例が悪性腫瘍であり,19症例が良性腫瘍であった.悪性腫瘍は浸潤性乳管癌12例(硬癌6例),粘液癌1例であった.良性腫瘍19症例のうち,手術もしくは針生検により確定診断がついた症例は7例であり,その内訳は乳腺症2例,線維腺腫5例であった.腫瘍部と非腫瘍部のVs値は,非腫瘍部に比べて腫瘍部が明らかに高値を示した.悪性腫瘍・良性腫瘍ともに病理組織学的所見によるVs値に有意差を認めなかったが,悪性腫瘍は良性腫瘍に比べVs値が高値を示す傾向を認めた.
【結論】
VTTQを用いることにより乳腺腫瘍の硬度を簡便且つ定量的に測定可能である.悪性腫瘍,良性腫瘍のVs値に有意差を認めないものの,B modeでの超音波所見とVTTQを併用することにより非侵襲的な乳腺腫瘍の質的診断を向上させ得る可能性がある.