岡村 陽子, 阿部 康彦, 神山 直久

Yoko OKAMURA, Yasuhiko ABE, Naohisa KAMIYAMA

東芝メディカルシステムズ超音波開発部

Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【はじめに】
超音波による硬さのイメージングは，いくつかの手法が提案されているが，我々は組織の移動量を組織ドプラ法（TDI）の位相変化を利用して計算し，歪み量として映像化する手法を提案した．これまで我々の方法は，圧迫の全区間における歪みの積算量を計算していたため，安定性はあるがリアルタイム性はなかった．今回，上記の位相変化を瞬時に歪み量に変換することで，リアルタイム化を試み，その精度を検証したので報告する．
【方法】
リアルタイム方式では，予め設定された2点間距離の速度値とフレーム間隔から，フレーム毎に歪みを計算しカラーマッピングする．積算方式に比べて歪みの絶対値に変動が生じやすいため，時間方向へのスムージング処理や，歪みの最大値を利用して各フレームで規格化を行い，画像の安定化を図っている．使用装置はAplioXG^TM，探触子はPLT-805AT（中心周波数8MHz）を用い，生体模擬ファントムおよび乳腺腫瘍のTDIによるraw dataを取得した．このデータから，従来の積算方式とリアルタイム方式にて歪みイメージを再構成した．また，臨床データに対しては，正常部分と腫瘍部分の歪み比（正常部分/腫瘍部分）を比較した．
【結果】
ファントムおよび生体の結果から，リアルタイム方式では従来の積算方式と同様のイメージが得られることを確認した．歪み比は，悪性腫瘍（歪み値が小）の場合，積算方式に比べてばらついて見えるが，比の値は押しなべて高値傾向（より硬い）の結果を示した（図-A）．良性腫瘍における歪み比は，ほぼ同等な結果が得られた（図-B）．
【まとめ】
TDIを利用したリアルタイムelastographyは，積算方式と同等の情報を提供できることが確認された．歪み値が小さい場合は結果が異なるものの，硬い腫瘍がより硬く表現されており，周囲との硬さの違いの相対的な診断には影響は少ないといえる．ところで，従来の積算方式は，歪みが蓄積していく過程で生じる非線形的な変化もグラフで読み取ることが可能であるため，組織歪みの非線形性などのより詳細な解析には使い分けて利用することも期待される．