Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
泌尿器:腎・泌尿器

(S528)

急性局所性細菌性腎炎における腫瘤像と腫瘤周囲血流像との対比

Correlation of Clinical and Sonographic Features in Acute Focal Bacterial Nephritis With Special Reference to Flow Signals around Renal Mass Shadows

水関 清

Kiyoshi MIZUSEKI

市立函館恵山病院内科

Department of Internal Medicine, Hakodate Municipal Esan Hospital

キーワード :

【緒言】
急性局所性細菌性腎炎(Acute Focal Bacterial Nephritis,AFBN)は,画像診断法の進歩により明らかにされた疾患概念である.経過観察には超音波検査が優れるとの認識が拡がった一方で,腫瘤と臨床像との系統的対比はなお十分とは言い難い.筆者は,経日的な超音波検査で得られた腫瘤像の変化と臨床所見との対比から興味ある知見を得たので報告する.
【対象と方法】
対象は経日的に超音波検査を施行し,腎腫瘤像周囲の血流計測が可能であった21例.初診時主訴は全例発熱.発熱の出現から初診までの期間は2日〜14日,平均6.9日.検査間隔は病態の変化にあわせて1日から2週とした.
【結果】
年齢は1歳〜72歳まで.対象を1歳〜16歳まで(A群),17歳〜30歳まで(B群),50歳以上(C群)の3群にわけると,A群10例(男:女=4:6),B群6例(男:女=0:6),C群5例(男:女=3:2).発熱出現から初診までの平均期間は,A群;4.1日,B群;6.3日,C群;8.9日.患側は左:右=11:10,内訳はA群;左:右=5:5,B群;左:右=3:3,C群;左:右=3:2.罹患部位は上極17例,下極1例,多発例3例で,内訳はA群;全例上極,B群;上極4例,多発例2例,C群;上極3例,下極1例,多発例1例.初回検査時に認めた腫瘤像は,Bモード画像上,腫瘤周囲腎実質に比して腫瘤のエコーレベルが高いもの13例,低いもの5例,多発するもの3例.多発例の内訳は,複数の高エコー像1例,高エコーと低エコー像とを同一腎の異なる部位に認めたもの1例,複数の低エコー像1例.カラードプラ像は,腫瘤内部の血流信号が低下20例,同程度のもの1例.超音波検査は計77回施行し(1症例平均3.6回),のべ60腫瘤像を検出した.内訳は,高エコー像25,低エコー像32,その他3であった.単発例では,初期の高エコー像から低エコー化して消失;12例,高エコー像から等エコーを経て低エコー化し,さらに嚢胞様の無エコー像の所見を呈した後徐々に縮小して消失;1例,初期の低エコー像から消失;5例.多発例では,複数の高エコー像例は低エコー化して消失,高エコーと低エコー像の並存例と複数の低エコー像例は,2度目の超音波検査時に消失.腫瘤のエコーレベルと病日との関係は,高エコー像:低エコー像が,発症8日以内では18:2,発症9日以降では7:30.腫瘤周囲の血流のRIは,高エコー像で0.76±0.07,低エコー像で0.81±0.14.さらに経過中低エコー像を2度検出された9例におけるRIの推移をみると,初回検出時0.85±0.09,二度目の検出時0.73±0.14と回復にともなって低下していた.
【考察】
AFBNは,Hodsonらが動物実験モデルで証明した疾患で,ヒトでは1979年Rosenfieldらの報告を嚆矢とする.Rosenfieldは腎の腫瘤像を低エコー性と記載したが,1990年代以降高エコー性腫瘤像の報告が出始め,病初期には高エコー像を呈し,治療により低エコー化して消失するという定型的経過をとる例は,小児や若年例に多く,初期から低エコー像を呈する例は高齢者に多いことなどが明らかにされた.今回の結果からAFBNの病態を推測すると,炎症によって腎小葉は限局的に腫大して虚血に陥り,早期に高エコー化した後低エコー化し,腫瘤周囲の血管抵抗の増大をきたすものの,治療が奏功するとこれらはいずれも消失するという経過が考えられる.AFBNの診断基準の重要な柱は,腫瘤像が治療の結果消失することであるが,いまだに腫瘤像の検出のみでAFBNとする報告がみられる.AFBNという疾患概念を設けた意義は,病初期に重症化のリスクを評価することにあると思われ,腫瘤のエコーレベルと血流情報を加味した総合的な評価が望ましい.
【文献】
1.水関清:臨泌47:433-5,1993.
2.水関清:超音波医学35:S456,2008.
3.松山健:日医雑誌136:S274-5,2007.